最後に此処へ来たのは、いつだっただろう。

蝉時雨に混じって聞こえて来るのは、ざわざわと楽しそうな声とボールの弾む音。左胸に手を這わせれば、トク、トク、と心臓が五月蝿いくらいに高鳴っていた。


大丈夫。
みんなきっと、受け入れてくれる。

大きく深呼吸して、そうっと扉の向こうを覗き込んだ。








「利久(りく)!!?」

「え、利久!?」

「ほんとだ利久さんだ!」

「おかえりーーー!」



約1年ぶりに会ったサークルのメンバー達は、髪を切ったり伸ばしたり染めたり、化粧が濃くなったり薄くなったり、痩せたり太ったり新顔が増えたりと、多少の変化はあるものの、彼等のあたたかさは少しも変わらずそこにあった。

だけどその優しさは、僕には少し毒だ。妙に心がざわついてしまって、落ち着かない。不自然にならないように、笑顔を取り繕うのに精一杯だった。



「久しぶり」

「久しぶりどころじゃねーよ!1年だぞ?元気してたか…って、そんなわけないよな。ごめん」



5年来の親友である和樹(かずき)は、ハッとしたように唇を噛んだ。そして宙を彷徨った視線は自然と、僕の右手に向かう。

咄嗟に、後ろ手を組んだ。



「いや、、大丈夫。もう元気だから」



和樹の瞳は見れなかった。