間野さんのお見舞いを無理矢理変わってもらっている場面も、何度となく見ている。


翔ならどんなに重病を患てっていても、はいつくばってでも間野さんに会いに行くと思っていた。


「今回だけだから! じゃあ、また明日な!」


「おい、翔!」


僕の呼びかけにも答えずに走って教室を出て行ってしまった。


ってか、走る元気あるじゃねぇか……。


「あ~あ、逃げられちゃったね」


翔が出て行ったドアを見ていると、小森若菜(コモリ ワカナ)が同情したような表情を浮かべて声をかけてきた。


若菜とは幼馴染で、高校生になった今でも仲がいい。


その時、僕は腕に痒みを感じて無意識のうちに手を伸ばしていた。


爪の先で痒い部分をひっかく。


「いてっ!」


僕は思わず口走り、自分の腕を確認した。


治りかけていたカサブタが剝がれて血が滲んできている。


3日前、ささくれだった木に腕をぶつけてしまい、できた傷だった。


「なに?」


若菜が僕に顔を向けてそう聞いた。


「カサブタを剥がしちゃったんだよ。痒くてつい」


「ダメだよ。自然に剝がれるまで待たないと。血が出てるじゃん」


僕は舌打ちをしてポケットティッシュを取り出し、血を拭いた。


「それにしても、どうしたんだろうな翔のヤツ」


「そりゃあ、先生からあんな話聞いた後じゃ間野さんに会いづらいよね」


「え?」