若菜の言葉と、授業終了のチャイムが重なった。


「え……? ごめん、うまく聞こえなかった」


眉をよせてそう言うと、若菜は我に返ったように目を見開いた。


顔は耳まで真っ赤に染まっている。


もう1度何かを言いかけて口を開くが、休憩時間に入り、廊下や階段が一気に騒がしくなった。


途端に若菜は僕に背中を向けた。


「なんでもない!」


そう言い、階段をかけあがって行ったのだった。