家に戻った僕はどっと疲れが押し寄せて来た。


間野さんがなにを言い出すかと思えば、あんなわけのわからないことを言うなんて。


どうにか普通に会話ができる程度の僕に、あの話題はレベルが高すぎだ。


どう返事をすれば正解なのかもわからないし、笑えばいいのか怒ればいいのかもわからない。


ただ1つ言えるのは、今回のお見舞いは失敗だったのだろうということだけだった。


「あ~あ……なにやってんだよ」


最初の心配も無駄に終わって、妙な雰囲気になって――おそらく間野さんを怒らせるか、失望させるかして――謝ることもできないまま病室を出てきてしまった。


一連の出来事を思い出すと無気力感に襲われてベッドに横になった。


「だって、仕方ないじゃないか。僕にどうしろって言うんだよ」


誰かに言い訳をするように、ブツブツと独り言を繰り返す。


目を閉じてみても、寝返りを打ってみても、間野さんのことばかりを思い出してしまう。


これじゃ僕が間野さんのことを好きで、常に気にかけているみたいじゃないか。