「そうだよな。なんだ、ビックリした。もしかしていつもああやって人を驚かせてる?」


「うん、そうだよ」


「だよなぁ。病気や怪我を治す能力があるなら、自分の病気だって治せるはずだもんな」


そう言うと、間野さんが眉をゆがめて俯いた。


「ご、ごめん。つい……」


間野さんがあまりに突飛な話をするものだから、口が滑ってしまった。


「いいの。でもね……」


顔を上げた間野さんは荒い呼吸をしている。


また熱が上がって来たのかもしれない。


「この能力は自分には使えないの」


「え……」


なんだよそれ。


やけにリアルな設定だなぁ。


そう言って笑いたかったのに、僕の言葉は喉に張り付いて出てこなかった。


「……ごめん、今日はもう帰って」


なにも言わない僕を見て、間野さんは短くそう言ったのだった。