「黒マントの男は私に言ったの。『命を救ってやる。その代わり、この能力をお前に授ける。どう使うかは自分で判断しろ』って」


「能力って?」


「さっき見たでしょ?」


間野さんはそう言って僕へ向けて手のひらをかざして見せた。


触れていないのに、間野さんの手から微かな温もりが流れてきているような気がして後ずさりをした。


「あの時から、人の病気や怪我を治すことができるようになったの」


大真面目な顔でそう言う間野さんに、僕はその場で左右に首を振った。


嘘だ。


そんなことあり得ない。


そう思い、口元がゆるんで笑顔になった。


それを見た間野さんは一瞬切なそうな表情を浮かべたが、次の瞬間には笑顔になっていた。


「なぁんてね。そんなわけないじゃん。晃平君には肌色の絆創膏を貼ってあげたの。まるで傷が消えたように見えたでしょ?」


何かを隠すように早口でそういう間野さん。