「小学校低学年の頃、バスに轢かれたことがあるんだ」


「でも助かったんだろ。だからこうして今も……」


そこまで言って一旦口を閉じた。


言おうかどうしようか躊躇して「生きてる」と、伝えた。


余命宣告をされている人に対して言っていい言葉かどうかわからなかったが、
僕の言葉に間野さんは花が咲くようにほほ笑んだ。


安堵すると同時に、間野さんの無理のない自然な笑顔に引き付けられる。


「そうだね。生きてる」


間野さんはそう言い、自分の手に視線を落とした。


「事故に遭った時、私は生きたいと願ったから」


「それなら今回だってきっと生きられる」