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廊下の壁に背中をもたれた状態で僕は203号室のドアをジッと見つめていた。


今、看護師が間野さんの容態を確認してくれているところだ。


目の前で倒れてしまった間野さんをほっといて帰るワケにはいかず、診断結果が出るまで待っている状態だ。


そんな中、僕は晃平君の膝の傷を思い出していた。


小さな傷だったけれど血が出ていたことを鮮明に思い出すことができる。


そして間野さんは晃平君の傷を消した……。


何度頭を振ってみても、その光景は僕の脳裏から消えなかった。


なにかの見間違いだ。


幻覚だったのかも?


そう思い込もうとしても、ダメだった。


間野さんはあの能力を使う前に僕に口止めをしてきたのだ。


本人も自覚している能力なのだから、僕の勘違いであるはずがない。


「ちょっと熱が出ただけみたいだね」


そう言いながら病室から出て来た看護師にハッと我に返った。


「熱……ですか?」


「あぁ。大したことはないから大丈夫だよ」


そう言われて、僕は病室の中を確認した。


間野さんはベッドで横になり点滴を付けられた状態で、僕を手招きしている。