そのすさまじいこけっぷりに呆然としていると、間野さんが晃平君に追いついた。


「晃平君、大丈夫!?」


間野さんが声をかけたと同時に、晃平君は大声を上げて泣き始めた。


上げた顔からは鼻血が出ていて、僕は慌ててポケットティッシュを間野さんに手渡した。


「ありがとう大富君。ほら晃平君、顔を見せて」


間野さんは幸平君の鼻血を丁寧にふいていく。


なんの障害物もない廊下だと言っても、激しくこけてしまったため膝から血が出ている。


「看護師さんを呼んでくるよ」


そう言った僕を間野さんが引き止めた。


「大富君、今から見ることは決して誰にも言わないって約束してね?」


いつもの笑顔を浮かべて間野さんはそう言った。


「え?」


一体なんのことだろうか?


そう思っている間に、間野さんが晃平君の膝に手を当てた。


「大丈夫大丈夫。怪我なんてしてないからね」


晃平君にそう声をかけながら、傷を上で手のひらを何度も往復させる間野さん。


そうしている間に晃平君が泣き止み、キョトンとした表情に変わった。


「ほら平気でしょ?」


そう言って間野さんが手を離した時、膝の傷が完全に消えているのを見た。


まるで最初から怪我なんてしていなかったみたいに綺麗だ。