安堵すると同時に、自分の死を受け入れている間野さんに胸が痛んだ。


自分の死を受け入れるのは安易なことじゃない。


運命にあらがうことができるのなら、どこまでも抵抗しないだろう。


「あ、ちょっと待って!!」


そんな声が聞こえてきて振り向いた。


廊下の奥から走って来る男の子の姿があり、その男の子を追いかけて出て来たのは間野さんなのだ。


僕は目を見開いて2人を見つめた。


「晃平君! こけちゃうよ!?」


晃平君と呼ばれた少年は入院着を着ていて、右手にギプスをはめた状態で全速力で走って来る。


「あ! 大富君! 晃平君を止めて!」


僕に気が付いた間野さんが叫ぶ。


「え、え?」


咄嗟のことで判断できなかった。


とにかく、この走る少年を止めればいいだな?


そう思い、晃平君を抱き留められるように両手を伸ばしたのだが……一歩遅かった。


僕の手前で晃平君は顔面からスライディングするようにこけてしまったのだ。