今すぐ逃げ帰ってしまいたい衝動に駆られるが、僕にはそれすらできなかった。


悲し気に俯く間野さんにかける言葉なんて、もちろん知らない。


ただ、重苦しい空気が2人の間に立ち込めていた。


仕方ないじゃないか。


僕はこういうのに慣れていないんだ。


女子とまともに会話できるのは、幼馴染の若菜が相手のときくらいだ。


そもそも、若菜はこんなに美少女でも病弱でもない。


「あの……」


間野さんの小さな声にビクリと体が跳ねた。


僕の反応に間野さんも驚き、目を丸くして僕を見つめる。


絶対に変なヤツだと思われただろう。


「な……なに?」


「今日は大富君1人なんだ?」


気を取り直したように間野さんが訊ねる。


僕は小刻みに頷いて「あぁ」と、答えた。


でも、それだけだ。


思っていた通り会話を続けることができない。