「大富君?」


突っ立っている僕へ向けて間野さんが声をかけてくれた。


僕は無理矢理笑顔を作る。


きっととてもひきつってブサイクな笑顔になっていることだろう。


でも、これが今の僕のせいいっぱいだった。


「じゃ、ゆっくりしてって」


看護師はなにか勘違いしているようで、僕の背中をトンッと叩いて勤務へ戻って行ってしまった。


「大富君、どうぞ入って」


未だにドアの外にいる僕に近づいて、間野さんが言う。


けれどここは個室で、中には間野さん1人しかいない。


つまり、僕が病室へ入ると2人きりの空間ができあがってしまうのだ。


僕はその空間で会話を保つことができるとは思えなかった。


「プリントを持ってきただけだから」


僕は早口にそう言って、間野さんにプリントを突き付けた。


間野さんは驚いた顔でそれを受け取る。


同時に後悔した。


これじゃ間野さんのことを拒絶しているようにしか見えない。


間野さんは眉を下げて俯いてしまった。