王子様がお姫様にするような、慈しむような温かなキス。

自分でも、頭の中が茹で上がりそうなくらい、体温が上昇しているのが解る。

唇がはなれて、視線を合わせると、胸の奥で何か疼く感触。


「ねぇ、名前呼んで?」

「……し、篠田……さん?」

「颯吾」


軽いキスが落ちてきた。


「颯吾」

「そ……颯吾……さん」


名前を呼ぶと満面の笑みをうかべて、瞳に灯っていた光が増した。

再び劣情を滲ませた瞳に射抜かれる。


「君はもう、俺のものだ」


私は……颯ちゃんのもの……?

呪文のように心で繰り返すと、嬉しくて頬が緩む。

頷くと、深く深く……息さえ食べられてしまいそうな深いキスを落とされる。

ゆっくりと弛緩して何度も角度を変えて味わうような優しいキス。

1枚1枚服を剥がされ、躊躇いながらもすすめられるままに肌を露出されていく。

身体を這う唇と指先は、まるで壊れ物を扱うかのように繊細で。

時々チリッと痛みを伴いながらも、素肌に触れる唇の柔らかな感触は、脳髄まで痺れそうな刺激があって眩暈がした。

誰にも見せた事のない部分を暴かれて、無意識にもらしてしまう声とか、無性に恥ずかしい。

手で口を塞ごうとしても、邪魔だとばかりに退けられ、頭上で縫い留められた。

いつも爽やかで落ち着く颯ちゃんの香水も、今は官能的にすら感じる。

触れ合う肌は心地がいいし、耳元で囁かれる気遣う声すら私の体温を上昇させる。

身体を隅々まで晒す行為は、まさに羞恥の骨頂で。

こんなの、颯ちゃんが相手じゃないと絶対耐えられない。

どんどん溶けだし、快感を拾い跳ね上がる自分の身体に戸惑ってしまう。

耳に掛かる颯ちゃんの吐息は熱くて悩まし気で。

今この時間だけは、この人は私のものだと誇示したい気持ちになった。

一分の隙間なく繋がって、私だけものだと顕示欲が掻き立てられる。

意識が混濁していく中、一度口にした言葉は堰を切ったかのようにこぼれ落ちた。

今だけは、素直な気持ちを口にしても許されるよね。


「颯吾……さん……。好き……」