何度も角度を変え舌を絡める口づけに、身体が茹で上がりそうなほど、ぼうっと熱が帯びていく。

このまま突き進んじゃダメっ。

頭に警鐘が聞こえるのに、全力で拒絶も出来ない。

だって、颯ちゃんは私の大好きな人だから。

幼少期から恋い焦がれ慕ってきた人。

私の世界に輝く唯一の人。

その人に求められて、拒むより身を委ねたいとすら思ってしまってる。

私、どうしたら―――。

少し顔が離れると、情欲に染まった瞳とぶつかった。

うっとりとした恍惚とした表情が、とても色っぽい。

見惚れていると、背中と膝の下に手を差し込まれ、持ち上げられた。


「きゃっ」


器用に隣の部屋へと続く扉を開けて、薄暗い中を進む。

広いベッドを目の当たりにして、心臓が高鳴った。

経験がなくても、この場所は入ってはいけないのだけは解る。


「あ、あああああの……」


優しくベッドの上に寝せられて、膝をつく颯ちゃんを見上げる。

狼狽する私を他所に、ネクタイを外し、ワイシャツの首元の釦を何個か外すと、焦れったかったのか裾を持って捲り上げて脱いだ。

それをベッドの下に放り捨てて、私の上に跨る姿は、まるで狙いを定めた捕食者のようで、注がれる視線は力強い劣情に揺れている。

開いたままの扉から、リビングの光が入り込み、颯ちゃんの引き締まった身体に美しい陰影をつくっている。

細いと思ってたのに、しなやかな筋力がついた逞しい体躯。

率直に、綺麗だな、てぽぉっと見惚れてしまう。

この状況って……やっぱり、そういう……意味?

早鐘を打つ心臓を服の上からおさえた。

性急に噛み付くようなキスが再開される。

割って入って舌に咥内が蹂躙されながら、正気さを取り戻した私は息継ぎの合間に掠れた声で言う。


「し……のだ……さ…んっ」


呼び掛けに応じる様子もなく、絡まれる舌が逃げる私を追ってくる。


「はっ……待って……。んっ…ん……まっ……」


僅かな隙間から、何とか言葉を絞り出す。

少ししてから、不本意そうに眉を顰め唇をはなした。


「……何?」

「私達……付き合っても、いないし。それに………」