家に帰って、鞄から自分のスマホを取り出すと、颯ちゃんの仕事用の携帯からの何件も不在着信があり、心臓が飛び跳ねる。
そういえば、お昼にも連絡がきていたのを彼是考えた挙句、返信出来なかったんだよね。
私達は、会社の方向と出社時間がだいたい同じなので一緒に出社している。
もし、予定がある時は、連絡を入れるのが常なのだけれど……。
キスしたのが気まずかった上に、クリーニング屋に行く為、黙って先に出勤したんだよね。
今日、颯ちゃんは接待だって言ってたのにこの着信歴……。
私の一方的な理由で無視しちゃって、相当心配させているのは明らかだった。
折り返し電話を、と思っても、まだ仕事中かもしれないし。
思いあぐねていると、スマホが振動して着信を告げる。
画面には颯ちゃんの仕事用の携帯番号……。
覚悟を決め兼ねていたから、いざとなると躊躇いがでた。
自分のワガママで心配をかけているという後ろめたさに、意を決して通話をタップする。
「もしもし?リリー?」
間髪入れずに、颯ちゃんの慌てた感じの声音が鼓膜に響いて、心を咎めた。
「あぁ~、良かった。何かあったのかと思った。今日どうしたの?」
「あ……うん、ごめん。連絡……するの、忘れちゃって……」
瞼が熱くなって、喉のあたりがキュッと引き締まりながら出した声は掠れていた。
「そっか。それならいいんだ。ただ、こんなに連絡がつかないのが初めてだったから少し焦った」
力なく笑う声に、胸が痛む。