「それと」
前髪を留めていた羽ピンを外して、メガネをかけられモサイ梨々子に戻された。
「私まだ仕事あるから一緒に帰ってあげられないのよ。りり1人、そのメイクをしたまま出歩くと危ないから、その姿で帰りなさい」
可笑しなことを言われ、思わず吹き出し笑ってしまった。
まるで私が、誰かに声を掛けられるかのような言い方。
ないない、そんな事。
天地がひっくり返ったって起こりはしないよ。
そんな私に不服そうな表情をしながら、更にポーチを取り出し差し出してきた。
開けるような促され、チャックを引いてみると、中には沢山の化粧品が入っていて瞳をパチパチ瞬きさせる。
「もう使ってない化粧品。今使ったヤツの他に、りりに似合いそうな色とか入れといたからこれも使って。1から揃えるとなると、結構な額になるでしょ」
「和歌ちゃん……ありがとう」
和歌ちゃんの心遣いに胸が熱くなって、ポーチをギュッと握った。
こんなに至れり尽くせりで、感謝しかないよ。
家に帰ったら、これを使ってメイクの特訓だ。
とりあえず、メイクも教えて貰ったし。
使用しない物とは言え、物を貰うだけなんて悪いから、少しでも売上に貢献しようと、化粧下地とファンデーションを買って、和歌ちゃんと別れた。
デパート内を、少しブラブラする。
颯ちゃんに、借りた物をそのまま返すには忍びないので、颯ちゃんの好きな某ブランドチョコレートを購入して帰路についた。
う~ん。
今日の私はめっちゃアクティブで、疲れたな。
こんなに自分に化粧品で投資したのは初めてで、でも、凄くドキドキして楽しかった。