私には到底これからも無縁のものだと思うけど、和歌ちゃんには勝てない。
それに、私でもりこメイクが出来るならって。
鏡で見たりこの顔を思い浮かべて、好奇心の方が勝った。
女の子はやっぱり綺麗なもの、可愛いものが好きなのだ。
2度とりこになるつもりはないけど、特殊メイクを覚えて自分であの姿になれたら、どんなにいいだろう。
そんな夢を見るように気持ちが高ぶる。
だけど、おブスな自分の顔の全容を見るのが怖くて……。
ベースメイクを手探りでして、アイメイクとか細かい部分だけ小ポーチに入るような小さな鏡を使用した。
和歌ちゃんも私の気持ちを察してか、何も言わなかったし、寧ろ「りりの肌は、肌理も細かいしシミやそばかすもないから、コンシーラーとか使わなくても、そのままで大丈夫」と褒めてくれた。
和歌ちゃんが厳選してくれた私に似合うカラーで、ファンデーションの塗り方やチップの使い方、ブラシを流す方向など教示された。
指示を受けながら、アイラインの引き方や睫毛をしっかり塗れるマスカラの動かし方など、不器用な私には匠の世界だった。
それでも、自分の手で少しずつ変わっていく顔は、何だか感慨深い。
最後に、細かい箇所のチェックをして修正を施す。
「よし、OK」
和歌ちゃんが言うと、鏡に中にはりこが居た。
うわ。
私でも、出来るんだ……。
思わず見惚れて、感嘆する。
右を向いても、左を向いても、そこに居たのはりこだった。
「服は決まってるの?」
「あ……」
メイクの事だけに気を取られて、服装まで気が回らなかった……。
地味めな服しか持ってないし、手持ちの服は大体颯ちゃんに把握されてるから、ダメだ。
デパート内で適当に見繕うしかないかな。
「やっぱり、忘れてたのね」
黙って頷くと、カウンターの下から和歌ちゃん御用達のセレクトショップの袋を差し出された。
「私のおさがりだけど、化粧品と合わせてあげるわ」
「そんな……こんなに沢山貰えないよ」
「化粧品はもう使わないヤツだし、服も着た感じイメージと違ったのよ。もう着ない物だからいいの。それより、今日は早く帰って明日に備えな」
「うん、ありがとう……」