中身は確認しなくても、正也と呼ばれていた颯ちゃんの友達だ、と思う。


「なんか騒がしいと思ってきたんだけど……」


パーティ会場は、本当に芸能人とか顔の広い人間が披露宴とかで使いそうなくらい広い。

多少騒ぎがあっても、遠くに居れば、それほど気になるものではなかっただろうけど、主催者側としては一応確認の為に来たらしい。

この恰好で。

でも、それがゆなちゃん的に良かったらしく、ウサギさんの登場に頬を紅潮させて興味深いげだ。


「まさか……隠し子か?」


顔は見えないけど、真摯な口調で問いかけてきた。

颯ちゃんが悪戯っ子の表情で私を抱き寄せる。


「家族みたいだろう?」


私達3人を家族に見立てられ、顔に熱が一気に集中する。

冗談だと解ってても、嬉しいような恥ずかしいような……。

口を引き結んでいると、ウサギがこちらを見ていた、多分。

うわ。

1人浮ついてたのがバレた?

神妙に、そのプラスチックの瞳を見つめ返してみる。

人の視線は怖いけど、玩具のような何処を見ているか解らない瞳は、仮令、中に人が入っていると解っていても、不思議と恐怖心は煽られない。

寧ろ、微動だにしない大きなうさぎは、ただの置物のように思えて。

さっきの颯ちゃんの友人が入ってるのかと思うと、少し自虐的というか、シュールな感じが妙に可笑しい。


「………か、可愛い……」


突然、何処からか籠った声が聞こえて辺りを確認するけど、声の主が見当たらない。

こてんと小首を傾げていると、急にウサギが顔がくっつきそうな程の至近距離までやってきて、思わず後ずさった。

吃驚して瞳を瞠っていると、


「だーかーらー!おまえは人との距離が近すぎるんだって!」


颯ちゃんが、着ぐるみの首根っこを掴んで引き剥がす。


「なんだよっ、邪魔すんなよ。こんなキレカワな娘が瞳の前にいて、平常心でいられるか!この戯け(たわ)が!」

「それが危険だと解っていて、放置するバカが何処にいる!用は済んだんだから、さっさと戻れ!」


颯ちゃんの砕けた言葉使と、しっしっと追い払う様な仕草に、2人の仲の良さを感じる。