こうしてイケメン2人が並ぶと迫力があると言うか、豪華な額縁に入れたいほど絵になっている。
きっと高値が付くはず。
「では怪しい者ではないとご理解いただけたと思いますので、彼女は私に任せて」
颯ちゃんの言葉に、さっきからの喉に小骨が引っ掛かったような釈然としない違和感。
その原因を模索しながら小首を傾る。
「水戸さんは、仕事でいらしたのでしょう?」
水戸さんの後ろに視線を流すと、奥では他社のMRと思われる営業マンがドクター達にすり寄ってる最中だった。
途端に、水戸さんの顔が引き締まり仕事の顔へと変化する。
ここまできて、他社に横やりはいれられたくない。
「水戸さん、行ってください」
「でも……」
躊躇いながらも、視線はしっかり『仕事場』を見ている。
「私は、もう大丈夫ですから」
背中を押すつもりで、なんとか笑って見せる。
私の所為で、これ以上迷惑はかけたくない。
「俺が無理言って来てもらったのに悪い……。ゆっくり休んで。篠田さん、すみませんが彼女を宜しくお願いします」
颯ちゃんに向かって頭を下げると、踵を返してドクター達の輪の中へ入っていった。
それを見送ると、私の背中に手が添えられる。
「じゃあ、正也、千尋。俺達はここでお暇するよ。小父さんには宜しく言っといてくれ」
「もっと楽しんでいって欲しいところだけど……仕方ないな。また今度ゆっくり」
「ああ、また」
にこやかに挨拶をし、私も頭を下げてその場を辞した。
思ったより会場の奥に来ていたらしく、出口が見えない。
颯ちゃんが居なかったら、この広間だけで迷子になりそうだ。
颯ちゃんを窺うと、さっきまでの笑みが消え、無表情に視線も合わせてくれない様子に、妙な緊張感を覚える。
いつもなら「リリー」って屈託ない笑顔で隙間もないくらいくっついてくるのに、今は背中を支えられながらも微妙な距離がある。
それがなんだか寂しいような悲しいような……。
一番安心出来るはずの颯ちゃんの腕の中なのに、パーティの華やかな雰囲気が、漠然とした不安を余計浮足立たせる。
もしかして………怒ってるのかな?