あれ?
なんか、異様に高価な雰囲気を醸し出してません?
しかも、このロゴ。
脳裏によぎる名前を打ち消すように頭を振り払う。
本物なんて見た事がないし、気の所為だよね……。
堂々と偽物かも、て、それは相手に失礼だ。
勘違いと言い聞かせながらも、心臓はバクバクいう。
固まる私を他所に、颯ちゃんは「早く開けてみて」と笑顔で促す。
本物は知らない、けど、ケースが醸し出す高級感に、躊躇いが前後する。
気の所為、よね?
心の中で反芻して、念を押す。
狼狽しつつも、震える指先でそっと箱を開いてみると。
キラキラ虹色の輝きが瞳に飛び込んできた。
透明の一粒大の石。
それを挟むように、小さいながらも同じ透明の石が横に連なり、一層輝きを増している。
「綺麗……」
あまりの美しい光に感嘆の息がこぼれた。
そして、眩しい。
本当に綺麗な輝きに、瞳の高さまで持ち上げうっとりしていると、颯ちゃんも満足そうに笑みを浮かべた。
この輝き、まるでダイヤモンドのよう……。
そう思った瞬時に、私ははっとして飛び上がった。
「ま、まままままままさか!ダっ、ダイヤモンド!?」
車中で驚愕の声をあげた私に、ご満悦な颯ちゃんは更に笑みを深めた。
即座にジュエリーケースの蓋を閉じ、両手で突き返す。
こんなの、誕プレの範疇を超えている!
「そ、颯ちゃん!こ、こ、こんな高価な物、貰えない!」
「どうして?」
「どうしてって……」
いくらブランドや宝石に疎い私だって、宝石の王様くらいは知っている。
それをこうも簡単に、誕生日プレゼントだと渡されて吃驚しない訳がない!
まして、颯ちゃんはこれから色々物入りになる身の人だ。
今ここで、私にこんな大金を使ったらダメ、絶対!
「でも、これ返品出来ないし」
悲しそうにケースを受け取ると、颯ちゃんは指輪を取り出し、私の手を自分の方に引き寄せた。
温かい颯ちゃんの手と、ふわっとかおる香水の匂いが鼻を擽る。
あ、と思っていると、私の左薬指に指輪を嵌めようしとしてきた。
「そそそそっ、颯ちゃん!そっちダメだよ!」
鏡のように向き合ってるせいか、左右の手を間違えたようだ。
慌てて手引こうとすると、指輪が指先でクルンと一周して落ちそうになる。