「すっごく綺麗よ。メイクすると、更に目鼻立ちが栄えるわ。昔、よくお姫様になりたいって言ってたけど、今のりりは本当にお伽噺のお姫様みたいよ。胸張っていってらっしゃい」
ドヤ顔の和歌ちゃん。
私が自信を持てるようにか、褒めすぎだと思う程、照れる言葉を送られて口を引きに噤む。
メイクの魔法に感動して、まじまじと鏡に食いつく私に、和歌ちゃんが柔らかく笑みを深めた。
「りり。どんなに辛いことがあっても、生きてる限り人は変われるわ。本当にりりが自分の殻に閉じこもっていたいなら仕方ないけど、もし、少しでも今のままじゃ嫌だと思うなら、ちょっとだけ勇気をだしてみて。見た目なんて、メイク一つ、服一つでどうにでもなるのよ。りりがその気なら、こうやって私も手伝うから」
「和歌ちゃん……」
私なんかの為に、真剣に向き合ってくれる和歌ちゃんの言葉が嬉しくて、感動のあまり泣きそうになると「メイクが落ちるから我慢!」と怒号が飛び、緩んだ表情筋をキリッと引き締める。
飴と鞭の態度に涙はすぐ引っ込んだ。
自分の唯一の友達が和歌ちゃんだっていう事が誇らしい。
「出来た~?」
下から晴ちゃんの声がした。
そうだ、感動してる場合じゃなかった。
急いで、晴ちゃんと水戸さんがいる1階に降りて行くと、階段の下で2人が此方を見上げていた。
和歌ちゃんの後を降る私の姿を見せると、2人が目を見開いて固まった。
私は恥ずかしくて、やっぱり俯いた。