晴ちゃんは、現在大学院生。
小母さんに似たふわふわの癖毛がプードルみたいで可愛らしい。
「晴ちゃん、今帰り?おかえりなさい」
「ただいま。それでどうしたの?ちょっと空気悪そうだけど、痴話喧嘩?」
晴ちゃんは、すっと瞳を細めて威嚇するように水戸さんを見た。
颯ちゃんほどではないけど、晴ちゃんも昔から私を妹のように大事にしてくれているのだ。
「ち、違うよ!ただ……仕事でパーティに行かなきゃいけないんだけど……私そういう服持ってないし、普通のメイクも出来なくて……」
こっちの空気の方が不穏だと、焦りつつ。
後半情けなくてしゅんとすると、晴ちゃんが近づいて来た。
「な~んだ。男とモメてんのかと思ったら仕事か。つまらんな~」
何を期待してたのか、残念そうに呟くと、水戸さんをチラッと見てすぐ視線を私に戻す。
「りりの小母さんのは?て……サイズが合わないか」
うん、うちのお母さんちょっとぽっちゃりだから……。
「なら、うちの母さんの貸そうか?」
「え……、いいの?」
「何かしらあるだろう。メイクは……りりの友達、化粧品関係の仕事してなかったっけ?」
「……あ、そうだ。和歌ちゃん今日休みだったはず!」
私の唯一の友達の和歌ちゃんは、美容部員として働いているんだけど、ちょうど今日は休みって言って気がする。
「じゃあ、可能ならメイク道具持って来てもらえ。りりは服選ぶぞ」
私と水戸さんについてくるよう、クイッと顎で指示をだす。
小母さんは外出中のようで、勝手に服を借りるのは気が引けたけど、服飾関係の仕事をしている知人から貰ったサンプル品で、着てないのがあるからと言うので、素直に拝借する事にした。
リビングで水戸さんに待機してもらい、私は晴ちゃんの部屋へ。
「これ着てみ?」
差し出されたのは、パウダーピンクのドレス。
白色の立体的なケミカルレースが胸元にあしらわれてて、ウエスト部分のリボンがアクセントになっていてる。
異素材切替でシフォンの膝丈スカートはパウダーピンクで可愛いらしい仕様だ。
白いボレロがセットになっていた。