食い入るような熱い視線が集中して、私は「あっ」と隠すように、それを手で覆った。

誰に貰ったかと言う事よりも、分不相応な物を身に付けている自覚が羞恥心を仰ぐ。


「それネットで見たけど、俺たちの給料、数カ月から半年分くらいもするダイヤの指輪だった。そんな指輪を贈るとは、どう見ても本気だろう。そんな男が敵じゃ、俺たちでは太刀打ち出来ないさ」


数か月から半年!?

絶叫しそうになって、既でのところで言葉を嚥下する。

値段を明確に言われないながらも、それだけで私を戦慄させるには十分な数字だ。

想像を斜め上に行き過ぎてて、指輪に触れる指が震える。

これは、家族の域を超えてない?

それとも本物の家族以上に家族としての想いが強いって証拠?

それにしても三沢さん……。

私みたいな人間が身に着けている物までしっかりと瞥見していたなんて、なかなか目敏い!

私なんか、恐ろしすぎて調べられなかったのに。


「マジか……」


貰った本人だって、身に余る代物に驚嘆しているのに、野村さんは両手で頭を抱え「マジか」を連呼している。

そうですよね。

こんな高い物、私には過ぎた物ですよね。


「その指輪、貰ったの?」

「……はい。でも」


「彼氏じゃない」と続けようとしたら、言葉を被せられる。


「男……?」

「はい……。一応……」


性別は男性間違いない。

質問に正直に答えたものの、どう対応していいか思いあぐね、どんどん声が尻すぼみになる。

緊張しながら、手のひらの中の指輪をきゅっと握ると顔が熱くなるのを感じた。

私の返答に、野村さんは「あぁ〜……」と深いため息をついて項垂れた。

向かい側の三沢さんが「ご愁傷様」と両手を合わせる。

彼氏じゃないんですけど~、て、なんだか言い出し難い雰囲気に補足も断念。

微妙な空気に、帰るタイミングを逃してしまい、頭の隅で今日の目的を思い出した。

ハンカチの男性は、今行けば居るかな。

意識が逸れた時。


「失礼しまーすっ」


力強いノックとともに、フロアの扉が開いた。

まだ室内に残っていた数人の社員が、入ってきた男性に注目する。