そう自分を諫めると、肩の荷が下りるのを感じながらも、酷くガッカリする自分もいたので不思議なものだ。
夕食をレンジで温めてる間。
颯ちゃんが着替えをしに私の部屋に行った。
仕事帰り真直ぐうちに来る事が多くて、スーツのままだとシワになっちゃうから、颯ちゃんが自分のリラックスウェアを持ち込んで、私の部屋に置いてあるのだ。
温まった食事をテーブルに並べていると、
「リリー!!」
2階から、颯ちゃんの叫び声が落ちてきた。
バタバタ大きな音をたてて階段を下る音がしたと思ったら、リビングのドアが勢いよく開いた。
「リリー!これは何!?」
あっという間に目の前にやってくると、ハンガーにかけてあったブルーのハンカチを突き付けられた。
「な、何って……は、ハンカチ……?」
それがどうしたんだろうと、不思議に小首を傾げる。
どう見ても下着じゃないでしょ。
「それは解ってる!これリリーのじゃないよね?どう見ても男物だっ」
颯ちゃんは、眉間にシワを寄せ、咎めるように怒りを露わにしている。
瞳を瞠って、こくりと固唾を飲んだ。
「それは……今日社食でお味噌汁零したら、近くに居た人が貸してくれたの」
「リリーだって、いつもハンカチ持ち歩いてるでしょ?自分の使わなかったの?」
「鞄から取り出す前に差し出さ……」
「男は皆下心があるんだから、気を許しちゃダメでしょ!?」
語尾を奪われ、言葉を被せられる。
し……下心?
それは、絶対ないでしょう……。
確かに興味があったとは言われたけど、私だよ?
周りから疎まれてるような私に、下心なんて抱くはずがないでしょ。
颯ちゃんの過剰な反応が可笑しくて、くすくす笑ってしまった。
「颯ちゃん。こんな私に、それはないから」
「いいや。リリーは可愛いよ?可愛くて可愛くて、俺なんか食べてしまいたい衝動を抑えるのに必死なのに」
そんな大げさな。
颯ちゃんの溺愛は、贔屓がすぎるんだよ。
「颯ちゃんだけだよ、そう思うのは……」
「リリーは自分を解ってなさずぎるんだよ!あのハンカチ、どうするの?」