大げさなお祝いの言葉に、テレて笑いを零す。

丁重に両手で受け取る。


「もうプレゼント貰ってるのに、ケーキまでって……なんか贅沢だね」

「うん、リリーは俺の特別だからね。❝それ❞もしたままでいてくれて嬉しい」


私の手に視線を流し、柔らかく微笑んだ。

❝それ❞を指すものが、シッカリ私の手の上でキラキラしてるものだと気付いたら、顔から火が吹き出しそうなくらい恥ずかしい。

しかも、それが嵌められてるのは左手!

穴があったら入りたいし、埋まりたい。

これじゃあ、今更返すと言っても、全く説得力がない。

寧ろとても気に入ってるってようにしか見えなくない?

もう、自分で自分が信じられないっ。

颯ちゃんはにこにこ優しい微笑みで私の手を見つめている。

もうすっかり返却する雰囲気ではなく、お礼を言うしかなかった。


「あ……ありが、と……」

「うん、俺もつけてくれてて凄く嬉しいよ。魔除けだと思って毎日つけてよ」

「……魔除け……?」


ああ、なんだ。

……そっか。

確かにパワーストーンは魔除けだったり開運だったり、目的に応じた効力があるって言うもんね。

ダイヤモンドにどんな効果があるか解らないけど、颯ちゃんは、私の邪な思いとは違う、純粋な気持ちでダイヤをプレゼントしてくれたんだ。

なんだ……。

うん、やっぱり颯ちゃんは颯ちゃんだ。

悪戯に、勘ぐったり、ささやかな期待なんかしちゃいけない。

だって、正当な婚約者がいる人なんだから。

私が気づかなかっただけで、きっと今までも接待だとか会社のお付き合いだとか言ってたアレが、デートだったのかもしれない。

婚約者の存在を知る前だって、颯ちゃんほどの男性に、恋人が居なかったわけがなんだし。

それを、いつも自分と一緒に居るからって恋人がいないと決めつけてたのは、私の勝手な希望的観測にすぎなかったのに。

颯ちゃんはただ、いつも1人の私を家族として気遣ってくれてただけなんだ。

仕事でどんなに遅くなっても、母が夜勤の日には私の様子を見に家に寄ってくれたのも。

私が特別だって言うのも、家族として。

手がかかる子ほど可愛いっていうもんね。