別れ際にしたキスを思い出すと、激しく鼓動が歓喜していた。

後日、りこ扮するリリーと辰巳の店で食事をし。

そのままリリーとの将来の為に用意したマンションにお披露目として連れて帰った。

家財は揃っている。

リリーは何時でもその身1つで来てくれていい。

その一室で、リリーを抱いた。


空にぽっかりと月が浮かぶ夜だった。

一糸纏わぬ四肢を絡ませる。

唇が触れる素肌の柔らかな感触に、微かな眩暈を覚えた。

微かに上昇する体温。

不安気に瞳を潤ませ、俺の動作1つ1つに恥ずかしそうに戸惑っているが、拒絶はない。

いつの間にか柔らかく丸みを帯びた女性らしい体つき。

その奥にある芯を解くように、指先を這わせた。

宝石のように輝く大きな瞳と、穢れを知らない白く美しい肌。

至る所を撫で、口づけ、与える熱。

それ応えるように、リリーから壮絶な色気が滴る。


「愛してる……」


何度も、繰り返し繰り返し伝えた。

押し寄せる快楽と、初めての痛みに歪む表情、あられもない痴態。

どんな些細な変化も、身体のうねりも、燻る熱も、全部俺のものだ。

蕩けきった自制は完全に制御不能だった。

御伽話に出てくる王子様がお姫様にキスするような、そんな優しいキスはしてやれない。

腹の底にたまった慕情を放出させるように、何度も突き上げる。

大事なものを誰にも奪われないように、リリーが誰のものかを刻み込む。

リリーの口から切なげに吐き出される甘い吐息を飲み込むように、容赦なく口付けた。

あどけなかった表情に艶が醸し出す。

―――ゾクリとした。

かつて笑顔を綻ばしていた可愛らしい少女は、俺の手で快楽に酔いしれている。

この心を占めるのは、果てしない独占欲。

誰に渡さない。

自分に母親が居ない事や、家族を身近に感じなかった時も、こんなに誰かを欲した事はなかった。

滾る激情は、すべてリリーにだけに向かっていた。



リリーとの半同棲生活は、欣幸の至りのようだった。

りこで在る時は、抱きしめると腕を巻き返してくれて、顔を近づけると瞼を閉じてキスを受け入れてくれる。

リリーでは突っぱねられる事も、りこだと容易に受け入れてもらえた。