いや、男を苦手とするリリーが俺以外の男について行く事態が想定外だ。
焦燥感に苛まれながら、アクセルを踏み込んだ。
パーティの会場に入ると程よい熱気で満たされていた。
立食式のパーティは、多くの花で彩られ、多くの男女の談笑が耳に入ってくる。
大きな会場にもかかわらず、リリーを見つけるのは簡単だった。
パートナーそっちのけで男が浮ついた視線を流す先。
そこにリリーが居る。
顔を確認しなくたって、姿形で解る。
愛おしい対象に照準を合わせると、人並みを縫うように突き進んだ。
後ろ姿でも、リリーが怯えているのが解る。
隣にいる男の腕を支えに、立っているのがやっとって感じだ。
リリーが俺以外の男に触れている……。
遠目ながら、なかなか顔の整った男だった。
―――気に入らないな。
眉を顰めると、突如正也が現れ。
リリーに興味を持ったように近づき、話しかけ始める。
顔を隠していない今のリリーの狭いパーソナルスペースには、人懐っこい正也の距離は危険だ。
「チッ」
舌打ちをして足早に近づくと、案の定正也が近すぎる距離でリリーに迫っていた。
後ろからリリーの瞳を手で覆うとそのまま自分に引き寄せた。
リリーは震えて過呼吸になりかけている。
身体向きかえらせ、抱きしめると背中をポンポン叩き、ゆっくり呼吸を繰り返させる。
暫くして落ち着いた様子で、リリーは俺を振り仰ぐ。
明らかな安堵の色を浮かべた大きな瞳は、誰にも心映りしていない事を確信させてくれる。
綺麗に施されたナチュラルメイクは、リリーの美しさをより引き立てていた。
美容部員の友達って……和歌ちゃんっていったか?
小学校から一緒なだけあって、リリーをよく解っていると感心した。
今回ばかりは余計だけど。
周りの男達の完全にリリーに心酔している。
こんな危ないところに居させたくなくて、早々に連れ去った。
2人きりになると、心置きなく十数年ぶりにリリーの顔を堪能する。
可愛いな……。
見惚れていると、そわそわしているリリーと視線が絡まった。
恥ずかしそうに頬を染め、瞼を伏せ、また上目遣いに俺を窺う。