今は庇護欲だが、遅かれ早かれ、俺はこの子に恋をするだろう。
だったら、今は外堀を埋めておくのもいい。
小父さんは驚いていたけど、学校を卒業するまで妊娠するような事だけはないようにと、念を押された。
学校生活というのも貴重な時間だというのも解っているし、奪うつもりもないので快諾した。
それなりに、高校生活は謳歌して欲しいと思った。
リリーには、まだ俺の気持ちを言うつもりはなかった。
小学校のトラウマで、未だ自信を失ったままのリリーに付き合うとか結婚だとか重圧はかけたくなかった。
人目に敏感なリリーには、まず心のケアを優先させたい。
だから、結婚すると挨拶をするまで小母さんにはこの話しを伏せてもらえるようお願いすると、了承してくれた。
リリーの恙無い学校生活の為にも、小母さんの口が滑るのは禁じたい。
リリーが俺を好きだと確信もあるし、これから先、俺の気持ちが変わらない自信もある。
小母さんが夜勤の時、リリーを1人にしたくなくて、仕事帰りに立ち寄ればご飯を作ってくれている。
既に所帯じみてる関係だけど、学校卒業するまで待つつもりだ。
ただ、我慢期間中、隙あらば抱きしめたり、手を握るのは許しい欲しい。
俺はリリーの成長を心待ちにしていた。
なのに……。
待ちに待った卒業を迎える頃、リリーは俺から距離をとるようになった。
最初は、年頃の所為か思った。
それでも瞳は変わらず俺を好きだと言っているし、特に心配はしていなかった。
リリーが就活を始めた。
せめて自分の手元に置きたいと、俺の勤める会社を勧めても頷いてくれず、近所の池田さんが勤める会社に入社を決めてしまった。
リリーとの未来が欲しい。
今すぐにでも結婚したい。
でも、今は微妙な2人の溝を埋めるのが先決だ。
可愛いとか、好きだとか、愛してると囁いても。
後ろから抱きしめても、手を握っても。
寝惚けたフリをしてベッドに潜り込んでも。
顔を赤らめて反応を示してるのに、暖簾に腕押し状態。
時々、切ないげに睫毛を伏せる。
その愁いた仕草が、また儚い美しさを一層際立たていた。
燻り続ける恋情。