娘の頑張りを見守るもの父親の仕事だと、拳を握る日々が続いた。
でも、少しでも不安を取り除けたらと、学校まで送っていき、時間が合うなら迎えにも行った。
そんな時、リリーを虐めてるらしいガキが瞳の前に現れた。
「おいロリコンヤロー。女にうえてるからって、子どもに手だしてんじゃねーぞ」
こいつ、意味解って言ってるのか?
頭痛を覚えながら、ガキの前で腕を組んで見下ろしてみる。
「おいガキ。ちいせー男は女に嫌われるぞ?黙ってても跨ってくる女が居るくらい、大きな大人になってからものを言え」
意味は通じなくても、揶揄されたのを本能的に感じ取ったらしく思いっきり睨んできた。
全然怖くねー。
リリーを苦しめる元凶を蹴り飛ばしてやりたいが、グッと堪える。
火花を散らす視線の交戦をしていると、
「そうちゃーん」
喜色満面にランドセルを背負ったリリーが、スピードを緩めず猪突猛進と駆け寄ってきた。
足に力を入れて、リリーの想いを勢いのまま受け止め抱き上げる。
「リリー、おかえり~」
喜々と首に巻きつくリリーをこれ見よがしに抱き上げて見せつける。
―――見ろっ、俺はこれだけ好かれてるんだぞ!
―――非力で小さいおまえには、抱き上げられないだろう!
心の中で嘲笑いながら、はリリーが王子様と比喩される綺麗な微笑みを張り付ける。
唖然と眺めるガキに、悠然と鼻で笑ってる見せると、今にも泣き出しそうに、
「ブスとロリコンなんてきもちわりーんだよ!」
と言い残して走り去っていった。
この富樫光と俺の対面を境に、リリーへのあたりがまたきつくなったのは挑発した俺の所為かもしれない。
更に俺がガキの嫉妬心を焚き付けた所為で、嫌がらせに拍車がかかっているようだった。
担任に連絡して注意喚起してもらい、ある程度おさまったが、見えない部分での嫌がらせは続いているようだ。
断言できないのは、リリーが隠すから。
この娘は、本当に大人に気を遣う、遣いすぎる。
今まで毎日泣いて帰ってきてたものが、急に平気な顔をして帰ってくるようになった。
俺が気づかい訳がない。