大人の世界は厄介で、こんな事件があっても仕事のポジションや抱えている案件やら引き継ぎやらで、黒川の小母さんはすぐに仕事は辞められなかったらしい。

退職するまでの期間、一旦はリリーを地方の祖母に預ける話が浮上したけど、俺がリリーの面倒を見ると名乗り出た。

いくら記憶がないとはいえ、急に親から離されたらリリーの精神状態に何をきたすか心配だった。

学校帰りに保育園に迎えに行き、両親どちらかが迎えにくるまで一緒に過ごす。

ご飯を食べさせたり、風呂に入れたり。

黒川夫妻がどうしても帰れない時は、寝かしつけたり。

それは、小母さんが仕事を辞めた後も続いた。

小母さんはパートの仕事を始めたけど、人員不足とかで夜勤のシフトが入るようになった。

リリーを預ける事に申し訳なさそうにする小母さんに、俺は全く問題ないと快諾した。

俺の言いつけを守って、素直だし、寧ろ俺の家で一緒に過ごせる事を「そうちゃんといっしょ、うれしー」と喜々としていた。


リリーが小学校に上がった後も、その関係は続いた。

学校から帰ると、リリーが俺の帰りを待っている。