初恋プリズナー


殆ど家に居ないから、大方どうして他人がいるんのだろうとでも思っているのかもしれない。

母親も母親で、妙に余所余所しい空気を纏っていて、誰にも気づかれないように嘆息した。

久しぶりに、祖父母の家にでも行けばよかった。

居心地の悪さに、さっさと自室に引っ込もうとすると、下から視線を感じた。

大きな瞳が宝石のような輝きに、つい忘我した刹那、


「王子様!!」


切実に恥ずかしいから、それはもうやめてくれ。

室内が微笑ましい笑顔に包まれる中、俺の隠すことなく被っていた猫が萎えさせた。



俺を王子だと揶揄った、その女の子の名前は『梨々子』といった。

それ以来、梨々子には無条件に懐かれ、ストーカーにあう日々。

たまに家に帰ると必ず上がり込んで居て、俺を追いかけて来る。

夜遅くに帰っても「今日りりちゃんが颯吾君に会いに来てたわよ」と今更母親に声を掛けられるようになった。

梨々子は保育園から帰ると、荷物を置いて真直ぐちに直行してくるらしい。

試しに何日か続けて、学校からまじめに帰宅してみると、本当に居やがった。

邪魔だとあしらってもめげることなく「そうちん、そうちゃん」と部屋に押しかけて来る。

トイレに行くにも、冷蔵庫に飲み物を取りに行くのにも、ずっと後ろをつてくる。

俺の居るところに、梨々子有り。

うざい……うざすぎる。

はっきり「邪魔だ」とか「ついてくるな」といっても全くめげる様子もなく。

寧ろ俺に話しかけられて嬉しいとばかりに破顔する。

1度だけ、正也の家でゲームをしてたら、帰りが遅くなった時があった。

以前までならそのまま泊まったり外に繰り出すのが常だったけど、なんとなく帰宅してみた。

別に、梨々子が待ってるからって訳じゃない。

断じてない。

流石にもう居ないだろうと思った。

思ったのに、居た。

玄関で不安そうに俯きしゃがみ込んでいた。

ドアが開いて俺を見た瞬間、泣きそうに笑って俺の足に纏わりついてきた。

仕方なく部屋に招きいれると、ゲームをする俺の傍らに、持って来たノートに絵を描き始めた。

それから、梨々子が遊びにくるたび、俺の部屋に入り浸っては1人で持参した絵本読んだり、人形で遊ぶかをしている。