私が不甲斐ない所為もあると思う。
子供故の歪んだ愛情表現だと言われ、頭では一応解ってる。
でも、散々踏みにじられた私の心は、納得できずに、おさまる場所もなく彷徨っている。
唇を噛むと、強く噛むなと颯ちゃんの指先が唇に触れた。
「リリーがどれだけ傷ついてたかを知ってるから、そいつを許せとは言わない。だけど、形は違えど、俺も行き場のない憤りを抱えてた時期があったから、形は違えど気持ちが解らないでもない」
「ただ」と強く強調して続ける。
「だからと言って、善悪の分別が付く歳になっても、さっきみたいな発言をして良い訳じゃない」
「……はい。すみませんでした」
「俺は、学校にリリーを迎えに行くたび『ロリコンヤロー』てなじられたけど……」
「本当にすみませんでした!」
私の知らないとこで、颯ちゃんをそんなふうに呼んでたなんてっ!
頬を膨らませると、宥めるように颯ちゃんが頭を撫でた。
「リリーには不謹慎な話だけど、リリーが泣いて俺に縋ってくれたのが嬉しかった。俺はずっと1人だったから、誰かに頼られ、必要とされる事に生きる意味を見出した。俺は傷つくリリーに救われたんだ」
微笑む瞳の奥に、私の知らない颯ちゃんの闇が見え隠れして、不安を煽る。
いくら自分の記憶を探っても、颯ちゃんにそんな冥暗の片鱗を見つけ出せない。
私、自分の事ばかりで颯ちゃんの異変に気づけなかったのかもしれない……。
「颯ちゃんは……1人じゃないよ?」
「ああ。今はリリーが居る」
今は……。
チクリと胸が痛んだ。
颯ちゃんは、変わらず微笑んでくれる。
繋いだ手は、しっかり結ばれ、そう簡単に解ける気もしない。
「私……光を許す」
「え……?」
「こんな私でも、颯ちゃんが救われたなら、あの時の苦しみはただの悲しいだけのものじゃないから。だから私は、もう光を恨まない」
私の記憶の颯ちゃんは、いつも笑顔だった。