「直訳すると、いつまでもここに居ないで、さっさと持ち場に戻れって事よ。もしくは、俺の梨々子から離れろ、見るな、触るな、近づくな」

「おいおいおい、お友達さん。それは言い過ぎじゃないの?」

「いや、あってる」

「颯吾!?」


3人のやりとりが面白くて笑った。

颯ちゃんが私の隣に座り、腰を抱き寄せる。

颯ちゃんの匂いにふわりと包まれて、頬が染まった。


「あの……颯ちゃん、これ小林さんが結婚のお祝いにって」


ケーキをさすと、瞳を瞠った。


「これは……凄いな……。リリー、良かったね」

「うん。こんな綺麗なケーキ初めてで感動しちゃった」


切り分ける前に颯ちゃんに現物を見てもらえて嬉しい。


「颯吾、俺には?俺には何かないわけ?」

「ああ……。ありがとう」

「え、俺頑張ったのにそれだけ?」

「厨房忙しそうだったから、早く戻った方いいと思うけど」

「りり、これは早くあっち行けって……」

「そこ訳いらない!」


私に訳す和歌ちゃんにツッコむ小林さん。

結局、その後ケーキを切り分けてもらい、私達がケーキを食べてる間に颯ちゃんが私の残したパスタと私のお皿にあるサラダを食べた。

そのうち和歌ちゃんの彼氏から連絡が入って和歌ちゃんは帰って行き。

私達も帰ろうと会計をしようとすると、小林さんはお祝いだからと一切代金を受け取らなかった。

ケーキだけでも十分嬉しかったのに、何から何まで本当感謝でいっぱいだった。

小林さんに見送られ、お礼を言って外に出ると、手を繋いで、颯ちゃんの車を駐車させてあるコインパーキングに向かう。

またこうして歩幅を合わせて隣を歩けるだけでも、凄く幸せ。

裏路地を出て開けた道路に抜けると、鮮やかなライトを纏う歓楽街に出た。

その時、何処からか名前を呼ばれた。


「梨々子?」


呼ぶ方に振り向くと、河原さんが笑顔で手を振っていた。

今日、いつの間にか下の名前で呼ばれるようになってたんだよね。

テレくさいけど、親しみを持ってもらえてるみたいで嬉しい。

通行の邪魔にならないように隅に移動する。

河原さんはショッピングを楽しんだ後、Ruheで食事をしに向かうところだったらしい。