あまりにも綺麗なケーキに感嘆し、和歌ちゃんは写メる。
「俺の渾身の一品、口に合うといいんだけど」
「これ小林さんが、作ったんですか!?凄い……芸術品みたいで感動しました」
「そう言って貰えると嬉しいな~。今切り分けるね」
「あっ、ちょっと待ってもらえますか」
ナイフを刺し込もうとするのにストップをかける。
私達の為に、小林さんがこんな綺麗なケーキを作ってくれたのに、颯ちゃんに見てもらえないなんて勿体ない。
折角だから和歌ちゃんとも食べたいんだけど、まだ来到着する気配はないし……。
この後、和歌ちゃんはこの後彼氏の家遊びに行くらしい。
だからいつまでも和歌ちゃんを引き止める訳にもいかないんだよね。
う~ん、やっぱり私も写メろう。
後で颯ちゃんに小林さんからいただきましたって写メと一緒に報告すればいいよね。
「颯吾は……」
「え……?」
「颯吾は、一切疾しい行動はしてないから」
瞳を瞬かせると、小林さんははにかんだ。
さっきの会話が通路までもれていたらしく、聞いてしまってごめんと謝られてしまった。
「香織は俺も同級生なんだけど、アイツが高校の時から颯吾が好きだというのは聞いていたんだ。当時色々チョッカイだして来てたし。ほら、見た目だけなら悪くないから、結構男が寄ってきてたし、自分に自信があったみたいで。だから颯吾もすぐ自分に靡くと思ってたみたいなんだけど、でも颯吾はずーっと梨々子ちゃんしか瞳に入っていなかったから、全く相手にしてなかったよ」
さっきの和歌ちゃんの疑問に答えてくれてるのだと解り、颯吾の想いを疑わないで欲しいと、続けた。
「颯吾は噂が流れ始める前も後も、香織とは個人的な連絡は一切とってない。それは俺が保証するよ。それでも2年間、香織が颯吾を婚約者だと思い続けられたのは、香織の父親が裏工作してたんだ。2人の婚約の話は仕事絡みで、すぐには公表でないけど、時期が整うまで待って欲しいとか何とか言い訳をしてね。その代わりにって、マメにブランドのアクセサリーやバッグを颯吾に成り済ました父親がプレゼントしていたみたいなんだ。しかも、ご丁寧に溢れんばかりの愛を綴ったメッセージカードまで添えてね。香織はそれを信じたんだ。決して安くないプレゼントの数々に、これが自分へ対する想いなんだと天秤にかけて、いつか颯吾と結婚するんだと信じたんだ」