私としては、親に言いくるめられたとはいえ、ある意味、香織さんも犠牲者だと思うんだよね。
だから、なるべく悪者にならないように、と願わずには居られない。
心底こわかったけど……。
それに、颯ちゃんみたいな王子様と結婚できるかもってなったら、やっぱり浮かれて周りが見えなくなるのも解ると言うか……。
私だって、りこになって、颯ちゃんと付き合えて、毎日が颯ちゃん一色だったし、恋は盲目ってヤツね。
それを前提に、香織さんが颯ちゃんとの婚約を周囲に漏らした事から噂が広まったらしいと経緯を説明した。
勿論、颯ちゃんは何度も否定し続けてくれたらしいけど、手元を離れ拡散された噂は収集がつかなかった。
噂話なんて、面白おかしく、時に、事実を歪ませて伝わるものだし。
そして、結婚間近と意識した時、調べてみたら愛人の影が……なんて。
発狂してしまうもの、仕方がないのかもしれない。
会社に乗り込んできた時は、凄く怖かったけど、それだけ颯ちゃんを想っての事だし。
颯ちゃんが駆けつけてくれて、誤解を解いてくれて、私達は想いを通じ合わせることが出来たのだ。
一通り話し終わると、
「それでも、デートしたり、男女関係がなくて、よく2年もの間婚約者だなんて言ってたもんね、その香織って人。プライベートのスマホの番号たって知らなかったんでしょ?」
和歌ちゃんが納得いかないように唇を尖らせる。
颯ちゃんは学生時代を含めても、香織さんと2人で会った事はないと言っていた。
和歌ちゃんは、デート1つした事がないのに自分が婚約者だという香織さんが信じられず、何かしら接点があったんじゃないかと疑ってるようで。
私は眉尻を下げるしかなかった。
沈黙が落ちるテーブルに、ことりと5号くらいのホールケーキが置かれた。
生クリームで整えられ上にシュガークラフトのピンクや赤、オレンジ、黄色、紫で大小様々な花と、苺やベリーが絶妙なバランスで配置されミントがいいアクセントになっている。
回りを沢山のカットされた果物で囲まれていて、美味しそう!
木の幹を意識したチョコプレートに『Happy Wedding』の文字が添えられていた。
あまりに芸術的なケーキに、つい見入ってしまったけど、驚き見上げた先には小林さんが居た。
「当店からのささやかなお祝いの品です」
「え?あ、あの、これ……あり、がとうございます」
ぽかんと開いた口を叱咤しながら、慌ててお礼を言う。