『和歌ちゃんに聞いて、ダメだったら連絡します。大丈夫だったら、そのまま小林さんのお店で待ってるね』


送信、と。

多分、大丈夫なんだけど、一応ね。

待ち合わせ場所についたけど、和歌ちゃんの姿が見当たらず。

とりあえず隅によって、きょろきょろしてみる。

スマホを取り出し到着したとメッセージを送ると、視界に影が落ちた。

視線を上げると、1人の男性がたっている。


「おねーさん可愛いね。誰と待ち合わせ?」

「……友達と」

「相手は女の子?良かったら、その友達と一緒に飲みに行かない?俺も友達呼ぶからさ、4人で遊ぼうよ!」

「……結構です」

「そう言わずにさー。あ、その友達も可愛い?」

「あの、本当に困り」

「いっそ2人でどっか行っちゃう?」

「い、行きません」


この人、しつこい!

こんな状況は初めてで、どう断ったらいいのか解らない。


「いや~、ほ~んと可愛いなぁ。おねーさん歩いて来た時からずっと見てたんだ。ねぇ、名前なんてゆーの?」


間合いを詰められて、身を竦めた。

舐めるように視線が顔中を這わせられる。

背筋に冷たいものが流れて、眩暈を覚えた。

にたにたした笑みが気持ち悪い。

口から吐き出される言葉も、意味が解らなくて吐き気がして、口を手で覆うと、


「具合悪いの?ちょっと休める所に行こうか」


気遣わし気にしながらも、口をだらしない笑みに歪め、腕を引かれた。

触れられたところから、ぞわぞわと身体を這うような寒気がせりあがる。

やだ、気持ち悪い。


「ちょっと、何してんのよ!」


怒気を含む和歌ちゃんの声がして、男性の肩をひいて私から引き剥がされた。


「あれ~?このおねーさんのお友達?おねーさんも可愛いね~。ねぇ、一緒に遊びに行かない?」

「行かねーよ」


吐き捨てると、私の手をとって「行こ」と歩き出す。

私達と平行して、顔を覗き込むように纏わりついてくる。


「待ってよ、おねーさん」

「うざい!この娘、今悪阻が辛いんだから、邪魔しないでよ!」


妊娠の言葉に、態度が一変して、悪態をつきながら男性はその場から去って行った。

はぁ、良かった。

助かった。