「もう。余計な事言わないでよ!」

「何よ、本当の事じゃない」

「……女が戦う時に、元凶である男が何も知らずに安全地帯にいるなんて、腹立つじゃない。梨々子だけが傷つくなんて、許せなかったのよ」


私に向き直って、照れたようにまた髪を耳に掛けた。


「篠田さんね、電話で『その女は婚約者じゃない。俺の梨々子は無事?すぐ行く』てこっちの返事も聞かず速攻切られて。なんだ、梨々子の事ちゃんと大切に想ってるんじゃないって思ったわ。しかも、吃驚するくらい早い到着だったし。電話中に既にバタバタ音してたから、携帯持ちながら既に移動開始してたのかもね」


俺の、梨々子……。

胸が熱くなった。

それに、河原さんがどれだけ気をまわしてくれていたのかを実感すると、ただただ感謝しかない。


「身なりはキチッとしてる感じなのに、駆けつけた時の髪の乱れようときたら、急いできた感半端なかったよね」

「篠田颯吾が自分の会社に居るって不思議な感じだったよね?」

「生で見ると、オーラなんかキラキラしてて眩しかった~」

「黒川さんを守る姿なんて、王子様って感じでカッコ良かったし~」


休憩中のプチ女子会に花が咲く。

あの時の、駆けつけてくれた颯ちゃんの姿を思い出すと、無性に颯ちゃんが恋しくなる。

今日仕事終わったら、会いに来てくれるって言ってたけど、夜まで待てない。

早く会いたいな……。


「あれだけ大々的に梨々子は自分のものだって宣言されたんだから、もっと自信をもって」


颯ちゃんとの結婚が車内に広まって、今日半日。

周囲の反応が180度変わってしまって戸惑う私に、早苗さんが励ましてくれた。



仕事を定時であがり、会社を出ると和歌ちゃんからメッセージが入った。

和歌ちゃんは今日休みで、私の会社のある駅まででてきてるらしい。

和歌ちゃんに颯ちゃんとの婚姻届を提出した後、結婚と妊娠の報告をした。

凄く驚かれたけど、とても喜んでくれて嬉しかった。

そのお祝いを込めて、時間があったら夕食でもどうかって内容で……。

颯ちゃんが仕事終わる時間までに帰ればいいよね?