幼少期にブスと言われて、人目が気になってから人と接するのを避けてきた私には、この質問にどう対応していいのか、一歩後ずさる。
で、出会い?(私と颯ちゃんの?)
変な恰好?(うっ……そんなにおかしかった?)
可愛い??(んん~?)
好奇心全開の女の子特有のキラキラが眩しい。
自分が自分の顔に慣れない私が、こんな沢山の双眸に注視されるのは、とても戸惑う。
瞳を白黒させて唇を震わせていると、
「ぐぉっほんっ!」
わざとらしい咳払いが響いた。
その主を探して皆きょろきょろしていると、今度は小さく「こほっ」と近くで咳が聞こえた。
課長だった。
「昨日朝一で、先日の件に対して、篠田商事の社長から謝罪が入った」
「……篠田、社長から……?」
お祖父ちゃんにまで迷惑をかけしまったらしい。
会社で騒ぎを起こしてしまったのだから、もしかしたら処罰があるのかもしれない。
仕方ないと腹を括り、お叱りを待つと想定外の言葉がかえってきた。
「その……うちの孫夫婦がお騒がせしてしまい、との事だったが……夫婦とは……?」
周りの女子社員の黄色い声が室内に木霊した。
顔が急激に熱くなる。
私達が届を出したのはお昼だったのに、朝一の謝罪で『孫夫婦』て、お祖父ちゃん!?
注がれる視線は私と左薬指にはめられた結婚指輪。
また歓声が響いた。
「静かに!」
課長が静止声をかける。
「加波としては、今回の件は、篠田商事側も被害者であるという見解に達している。長い間、あらぬ噂で君も心を痛めた事だろう。しかも、宮川側が勝手に暴走しての事件だ。黒川君は被害者だろう。処罰はない。ただ、その、身に危険を感じる程の事態は報告して欲しかった」
「は、はい。申し訳ありませんでした。あ、ありがとうございます」
「それから、身体の具合はどうだ?」
「はい、赤ちゃんの容態の安定していて順調でした」
「はっ!?妊娠しているのか??」
「え?」
またフロア内に歓声が上がった。
身体の具合って、赤ちゃんのことじゃないの!?
あ、頰を引っ叩かれた方ね!
顔を真っ赤にしていると周りから沢山おめでとうをいただいた。
「はーい!おめでたい事だけど、そろそろ各自仕事を始めて。残業になるわよ」
早苗さんが手を叩いて各々の仕事に戻らせる。