神の助けとばかりに、来客を迎えようと玄関へ向かい「はい」と返事をした。

サンダルに足を突っ込むと、勢いよく扉が開かれ、よく見知った顔がふたつ飛び込んできた。


「り、梨々子ちゃーん!!」


綺麗に正装した颯ちゃんのお父さんとお母さんに肩を揺らされる。


「颯吾の、颯吾の子供を妊娠してるって本当かい!?挨拶に伺ってるって聞いて、慌てて来たんだけど」

「あ、あの……今、中に……。上がってください」


玄関でもなんなので、と招き入れると、


「思ったより来るの早かったな」


何時の間にか上り框に佇む颯ちゃんが居て、声を掛けた。

憮然とした様に、颯ちゃんの両親は「おまえはなんて事をしてくれたんだ!!」と憤慨する小父さん。

小母さんは私の身体を労りながら、何故かごめんなさいと謝罪を口にする。

小父さんはそのままの勢いで、颯ちゃんの腕を引っ張ると猪のような突進力でリビングへと足を踏み入れて早々。

フローリングでスライディング土下座とばかりに深々と頭を下げた。


「このたびは、うちの愚息が大事な娘の梨々子ちゃんを妊娠させてしまい、申し訳ない!すまない!どう詫びていいものか」

「申し訳ありませんでした!」


小父さんと小母さんに並び、再び座り一緒に頭を下げる。

その姿に苦笑し、お父さんが頭をあげるよう促す。


「篠田、いいんだ。妊娠は颯吾君だけでなく、梨々子と2人の責任だ。2人が幸せならいいじゃないか」

「黒川……」

「それより孫だぞ!?俺たちもとうとうジジイになるなっ!」

お父さんの喜びように、小父さんと小母さんは肩から力抜き、やっと笑みを浮かべてくれた。


「ご飯まだでしょう?もうすぐでお寿司届くから食べてって。お祝いよお祝い」


嬉しそうにお酒を用意して、颯ちゃんの両親をソファの方へ押しやる。

最初は遠慮気味だった颯ちゃんの両親も、時間が経つにつれ、お酒の力も助長して、私達の式をどうするか、赤ちゃんが生まれた時の事等、色々談義し花を咲かせはじめた。

両家の両親が終始笑顔でキッチンにお酒の追加をとりに行きながら、嬉しさに込み上げてくる感情が視界を歪ませる。

俯き、今日何度目泣いてるんだろうと、枯渇知らずな自分の瞳に自嘲した。