「リリーは、何が不安?俺の気持ち?リリーがいつも言う、自分の容姿?」


答えを返せずにいると、颯ちゃんはベッドに隣接するチェストの1番上の引き出しか、手鏡を取り出した。

ローズレリーフ模様で、曲線を多用したクラシカルなデザインは、ヨーロッパ風の豪華でお洒落なデザインのその鏡は、私が子供の時、颯ちゃんの部屋で1人白雪姫ごっこをした時の私愛用の鏡だった。

あれだけお気に入りだったのに『ブス』と言われてから、顔を見るのも辛くて、忘れ去られたものだった。

颯ちゃんが持っててくれたんだ、と懐かしさに一瞬意識が過去にトリップして油断してしまった。

瞳の前に、鏡を翳され、私は瞠目した。

見たくなくて、反射的に瞳を閉じる。

私が自分の顔を見たくないのを知ってて、酷い!


「リリー、お願いだからよく見て。君が思ってる顔は、りこと何が違う?」


涙を零しながら、ぎゅっと瞳を瞑る私を諭すように宥める。


「そんなの、全然違う……」

「ちゃんと見てっ。何が違う?」


颯ちゃんはひかなかった。

いつも私が嫌がる事は、あえて遠ざけてくれたのに。


「リリー。俺がずっと愛してきたリリーの姿を、リリー本人にも見て欲しい」


卑怯だと思った。

颯ちゃんが愛する私の姿だなんて、甘い囁き。

私は自分の顔なんか見たくないのに!

この容姿の所為で、ずっとブスって嗤われてきた。

進級してクラスが変わっても、元凶の男の子はわざわざ私のクラスまで嗤いに来てた。

その所為で、新しいクラスでも嘲られるようになって……。

お陰で、私の小学校時代は黒歴史だ。


「リリーが自分をどう思おうと、俺は君が好きだよ。これから先、何があってもずっと一緒に居るから、だから、1度でいいから俺が愛する人の自分の姿を見て欲しい。……それとも、そんな俺も信用出来ない?」


前髪を上げた私の姿を前にしても微動だにせず、何も変わらない姿勢で愛を募ってくれる。

颯ちゃんが愛する……私の姿……。

私は私が嫌い。

だけど、そんな私を颯ちゃんはずっと見捨てずいてくれた。

今、顔が晒されても真っすぐ向き合ってくれる颯ちゃんを信じない訳いもいかない。

颯ちゃんの懇願に、肩の力を抜く。

睫毛を震わせ、恐る恐る、ゆっくりと瞼をあける。

でも、まだ鏡を見る勇気がなく、視線は逸らしたまま。


「颯ちゃん……。私の事、好き?」

「好きだよ。大好きだ」