「さっきも言ったのに、何故俺を信じない?香織の件だってそうだ。リリーを抱いた時、俺は俺を信じて待ってろって言っただろう?」


苦しそうに顔を歪め、眉根に深いシワを刻む。

今にも泣き出しそうな顔に、私は硬直した。


「突然リリーが消えて、俺、本当苦しかったんだ。電話は通じないし、ラインもメールも返信がなくて、連絡手段もない。不平不満があるのなら言ってほしかったよ」


首を横に振る。

颯ちゃんの不平不満なんかなかった。


「もしかしたら、幼馴染として付き合うのと恋人として付き合うのとでは、やっぱり違ったと思われたのかと思って距離を置いた方がいいのかとも思った」


違う違う。

大好きだったの。

好きすぎて、別れた後が死ぬほど辛かった。

涙を零しながら、首を横に振る。


「まさか、噂の婚約話なんて譫言が、リリーを不安にさせているなんて露ほども思わなかったんだ。俺たちはこの18年間、誰よりも近くに居て理解し合えてると思ってたし、何も言わない事が否定の意だと通じてると思ってた。噂なんか跳ね除けるだけの信頼関係が築けてると思ってた」


私は、静かに俯く。


「そんなの、全部俺のエゴだって解ってる。言葉も足りなかったと思う。だけど、信じて欲しかったよ、俺の気持ちを。何があってもリリーだけは決して裏切らないって事を」


颯ちゃんを疑ってたわけじゃない。

好きだって、愛してるって。

リリーに掛けられる言葉は、全部家族としてだと思ってた。

だって、王子様ような眉目秀麗な颯ちゃんと、不細工な私とでは誰が見たって不釣り合いでしょ?

リリーの恰好で手を繋いでも、すべては3歳の頃からの延長線で、子供扱いされてるたけだと思ってた。


「颯ちゃん……私の事……好き?」

「好きじゃなきゃ、こうして追いかけないよ」


顔を伏せた私の顔を覗き込み、子供に宥めるように頭を撫でた。

好きと言われても信じきれないのは、私がひねくれ過ぎてる所為かな。