『指輪はしくれてるかな?それが俺たちを繋いでくれてるって信じてる。どんなに離れていても、心はいつも傍に居るつもりだ。俺にとって、君が何より大切だと言う事を信じて欲しい』


はっとして息を飲んだ。

颯ちゃん……もしかして私だって、気づいてる……?

私の返事を待たず、すぐに晴ちゃんの名前がよばれて、晴ちゃんが「はいはい」と代わる。


『早く持ち帰って、ゆっくり休ませて』

「解ってるよ。だいぶ弱ってるみたいだから、大事に持ち帰る』

『……頼んだよ。じゃあ』

「はーい」


通話を切ると、泣きじゃくる私の背中を押して近くに停車しハザードランプのついた車に近づき後部座席のドアを開け押し込んだ。

続いて晴ちゃんも乗り込み、隣に座ると、運転席から晴ちゃんと同年代ふうの男の子が身体ごと振り返った。


「うわー。急に車停めさせて飛び出してったから何事かと思ったら、ナンパかよ。てか泣いてるし……おまえ何してんだよ。最低じゃね?」

「ナンパじゃねーよ。妹だ。男に絡まれてたから行っただけだ」

「へぇ~、妹いたんだ?妹ちゃん大丈夫?恐い男に絡まれたの?そりゃ怖かったね~」

嗚咽が止まらない私を気遣わし気に顔をのぞかれ、ビクッとすると、晴ちゃんが隠すように私の顔に手を被せた。


「コイツはダメだ。颯兄に殺されるぞ」

「颯兄って…………。え……?まさか、その娘、例の隣んちの()?」


晴ちゃん黙ると「マジで~!?」と車内にって響き渡った。


「いいからさっさと車だせ。早く送り届けるように念押されてるんだ」

「お、おうっ。颯吾さんの為なら喜んでー!」


居酒屋ふうに了解すると、晴ちゃんの友人は急ぐように車を発進させた。

例の隣んちの娘って、どういう意味だろう?

疑問に晴ちゃんを見ると「ほら、涙で前髪ベタベタ。顔にはりついてる」甲斐甲斐しく私の顔から眼鏡を外し、前髪を両サイドの耳に掛けた。

不細工な顔が晒されると吃驚して慌てて俯くと、隣から伸びて来た手にあるティッシュで鼻をつままれる。

鼻水が垂れてたなんて恥ずかしい。

そのまま自分の手で鼻をかんでると、晴ちゃんが眦の滴を指の関節で拭ってくれた。