因みに、今日のランチは海鮮丼。
いくらや海老、マグロにイカ、たこ、玉子。
これらが入って、ななな、なんと300円!
単品でお味噌汁をつけて、大満足。
勇気を出して社食に来てよかった~。
食堂の端の席に座って、幸せなひとときを頬張っていると、ちょうど混んできたらしく、向かい側の席にトレイにのったラーメンが置かれた。
ヤバイ、緊張してきた……。
相席が苦手だから、いつもお弁当もってきてるんだけど、今回は海鮮丼と相席を天秤にかけた結果、海鮮丼が勝ったのだから仕方ない。
食べ終わるまで、暫しの時間我慢。
前髪の隙間から覘いてみると、グレーのスーツが視界に入り、ますます視線を伏せた。
男の人だ。
たいてい私の容姿を怪訝がって、近づかれないのが常なのに、海鮮丼効果で社食はいつもより混んでいるらしい。
ラーメンセットの横に、営業に配られている会社の携帯が置かれているのを瞳の端で捉えた。
外回りに出ていた営業課社員が帰社したようで、そのまま社食に流れてきたようだ。
男の人は颯ちゃんとお父さん、颯ちゃんの弟の晴ちゃん以外は苦手で、職場の男性社員とも基本仕事以外の会話はした事がない。
だから、こうして近くにいるだけで落ち着かず、妙にそわそわしてしまう。
早めに出て、自販でミルクティーでも買って、自分のデスクでお茶にしよう。
そう思案していると、突然、テーブルの上の携帯のバイブがけたたましくうねりをあげた。
テーブルの上だから余計響きがよく、周りの社員も吃驚して「おぉ~」とか声を発している。
私も思わず飛び上がってしまい、飲もうとしていた味噌汁を零してしまった。
熱い味噌汁を吸収したタイトスカートを摘み、太ももにくっつくのを阻止して、移動用に持ち歩いている小さな鞄からハンカチを取り出そうと手を伸ばしたら。
先に正面からブルーのハンカチを差し出され、反射的に受け取ってしまった。
あ、しまった……。
瞳を瞠らせていると、私がお味噌汁を零す元凶となった張本人が無表情でこっちを見ていた。
意思の強さを主張している、奥二重の切れ長な瞳は少し釣りがっていて、睥睨されているような気がして、俯いた。