だから、どんな雑用でも営業課だけは自分で赴いて、小さなチャンスを掴もうとしている。
恋する乙女はアグレッシブだわ。
そんな河原さんは、自分磨きに余念がない。
時間があればエステでお肌を磨き、ダイエットとボディラインを保つ為にとジムにも通っているらしい。
おかげで、肌は陶器のようにツルツルだし、ウエストや足首も細く無駄な肉はない。
顎のラインまでの茶髪ボブがベビーフェイスをより甘く演出している。
夜な夜な使っている美容液は、外国から取り寄せていると言う代物らしい。
爪はいつも綺麗に手入れされていて、色鮮やかに彩られている(うちの課は、直接接客する事がないから髪型やネイルは比較的自由なの)。
元々大きいだろうと思われる目も、メイクで更に大きくクリっと強調され、ピンクのチークで表情は柔らかな印象。
昔見たお伽話のお姫様って言うのは、河原さんみたいな人を言うんだろうな。
うちの会社の制服は、白シャツにグレーのベスト&膝上のタイトスカート。
そこに差し色でピンクのリボンと、シックなデザインになっているんだけど、そのシックさが河原さんの華やかさを十分に引き立てている。
男性社員は、そんな可愛い河原さんにデロンデロンなのだ。
私もあんな容姿だったら、もっと自分に自信もてたかな……。
キーボードを上にのる右手に輝く指輪を見て、小さくため息を吐いた。
お昼休みになって、一斉に移動が始まりフロアの空気が一気に軽くなった。
節約でお弁当を持参してる人や、コンビニで買ってきた人は、デスクに残って雑誌をみたり、スマホ片手に昼食を摂るけど、大半は社員食堂で食事をすませる。
うちの会社の社食は、メニューが豊富で、定番メニューなら320円~800円で食べれるし。
日替わりランチは300円と、かなり低価格。
その他にも単品の小鉢が100円~300円とあって、ご飯だけ自宅から持ってきて小鉢を組み合わせて頼む人もいたりと、用途は自由。
人が多く集まる場所は苦手な私は、普段はお弁当だけど日替わりランチの内容によって社食を食べに来ている。