ごにょごにょ口ごもりながら答える。


「話を合わせるのは社交上大切だけど、最初に急いでいる事を念おさないと。その容姿で気さくに対応されたら、下心あるヤツは都合のいいように捉えかねない。後、男と密室に2人きりになるな。修理が済んだら声をかけてもらうよう言って、何処かで違う所で待機するなりしないと危ないだろう」

「別に……勘違いさせるような事をしたつもりはないのに」


唇を尖らせ、ムッとする。

まるで私が悪いみたいな言い方じゃない。

私の態度に颯ちゃんは眉間にシワを刻む。

その様子に肩を竦め俯く私に「何より」と強調し続ける。


「これが1番問題だ。言ったよね?残業終了の連絡もらった時。着いたら連絡するから、それまで屋内にいるようにって。それなのに、どうして外で待ってたの?夜は女性が1人で居ると危険だから、そう言ったのに」

「……ごめんなさい」


確かに言われた。

でも、颯ちゃんを散々待たせてしまったし、少しで早く短縮出来たらって、私なりに気を使っただけなのに……。

結果こんな事になってしまって、本当に申し訳ないけど。


「会社に報告はどうするの?」


やっぱり、した方がいいのかな。

りこの姿ならまだしも、地味子のリリーの姿で「襲われましたー」なんて言っても誰も信じて貰える気がしない。

寧ろ、夢でもみたんじゃないかと不憫に思われそう。


「……いいよ。やっぱりあの男の会社には俺が対応する」

「え?」

「自分の恋人が襲われて、黙ってられないでしょ」


こ。恋人……。

颯ちゃんの口からそう言われると、こそばゆくて、気を緩めるとだらしない顔になりそうでキリッと表情筋を引き締める。

でも……やっぱり嬉しい!

1人で葛藤していると、颯ちゃんが立ち上がり近づいてきた。

腰を屈めると、触れるだけのキスをする。

その動作に瞳をぱちくりさせると、にっこり微笑んで椅子から横抱きに抱え、ソファまで移動した。

意味が解らず颯ちゃんを見つめると、ギュッと抱きしめられる。


「俺の事……男は怖くない?」

「怖く、ない」


颯ちゃんになら、もっと触れられたい。