ぎこちない空気の中、作業中にかたまったり、落ちたりするとパソコンの状態を伝えて早速みて貰う。
修繕には思ったより時間がかかってしまい、メーカーさんは気を使って色々話しかけてくれる。
パソコンの事はよく解らないし、コミュ障な私は曖昧な笑みを浮かべて適当な相槌を打っていた。
室内に冷房はいれてあるけど、さっきからメーカーさんは顔を赤くしてマメに汗を拭いている。
熱がりなのかな?
遅くに来ていただいて心苦しいけど、早く終わらせて欲しい。
話しかけられるたびに手を止められると、気になってしまう。
迎えに来てくれるっていう颯ちゃんの為にも、早く打ち込みを終わらせたいんだけど……。
話し込まれるたび、時計ばかり気になる。
結局、少し席を外させてもらい、3階のレストスペースにある自販機に飲み物を買いに来た。
もしかしたら、メーカーさん同じ空間に人がいると気を使って喋ってしまってるのかもしれないしね。
それに、暑そうだったし。
冷たい物でも差し入れれば効率があがるかも。
えっと……こういう場合ってコーヒーでいいのかな?
それにしても、
「まだかかるのかな……」
小さくごちってみる。
独り言は、暗闇に溶けてしまう、はずだった。
「誰かと思ったら黒川か」
聞き覚えのある声音に振り返ると、窓から入る外灯や隣接するビルの明かりの中、その人の姿をあらわした。
あの告白以来会うのは初めてだから、緊張する。
「またフルメイクして、これからデート……にしては半端な時間だな」
水戸さんが訝しんで、腕時計で時間を確認する。
メイクの有無で、颯ちゃんに会うのがバレるとか恥ずかしい。
「今日中に終わらせなきゃいけない資料があるんですけど、パソコンの調子が悪くて。今メーカーさんが来てくれて、復旧してくれてるんですけど時間がかかって……。水戸さんも、残業ですか?」
「俺?これからお医者様の接待なんだけど、約束の時間まで他の仕事してたんだ」
そろそろ出なきゃいけないんだけど、と言いながら伸びをして、身体を解しながら、自販機にお金を投下して愛飲のコーヒーのボタンを押す。