「私は今、一生分の宝物をつくってるんです。この先、私の未来が茨と暗闇ばかりだとしても、この瞬間があれば、どんなに辛くても強く生きていける」


先の事を考えると正直怖いけど、今は颯ちゃんを一生懸命愛したい。

水戸さんの気持ちは本当に素直に嬉しい。

水戸さかの告白に頷けたら、きっと楽だし幸せになれると思う。

確かに、自分の中にある見ないふりをしていても、確かに存在している不安を突かれて、ほんの少しだけど気持ちが揺さぶられたのも事実だ。

だけど、それと同時に再確認したのは、颯ちゃんへの狂おしい程の慕情。

私はずっと小さい頃から、颯ちゃんの囚われてるから。


「騙してるのは自分……か。この腹黒川梨々子めっ」


は、腹黒川……!?


「「ぷっ」」


2人で笑った。

私の名前にそんな使い道があったとは……これは発見だわ。

その時、水戸さんの仕事用の携帯が着信を知らせて水戸さんが通話ボタンを押して出た。

どうやら取引相手らしく、片手で「ごめん」のジェスチャーをした。

私は微笑んで頭を下げ、ベンチから腰を上げると、


「黒川」


呼び止められて振り返ると、通話口をおさえて水戸さんが言った。


「俺、待つから。さっさと早く別れちまえ」

「別れませんよ。それに、待たれても困ります」


小声ではっきり答えると、屈託ない笑顔が返ってきた。

水戸さんが「あ、はい。その件ですが……」と通話に戻ったので、私は残り僅かの時間で昼食を済ませる事にしよう。

水戸さんからの告白は、本当に嬉しかった。

真摯な告白を受けたのは人生で初めてで、ましてその相手は社内No1の王子様だ。

こんな名誉な事はないよね?

それにしても『腹黒川梨々子』……。

水戸さんの巧みな言葉遊びに笑いが零れた。

流石トップ営業マン。

そう言えば、和歌ちゃん語録で「女はしたたかに」てのがあったな。

うん、図太く颯ちゃんの愛人を務めてやる!と決意を新たにした。



改めて、颯ちゃんへ想いを再確認し、心機一転した私は秘密事を水戸さんに話した事によって、開放的な気持になった。