「あはは。惚れた女に、そういう生々しいのがついてると少し……いや結構ダメージをくらうもんだな」
語尾を消え入りそうにしながら力なく笑う姿に、心が痛む。
「黒川にとっては唐突な告白かもしれないけど、でも、顔を隠してる今の黒川でも、俺は好きなんだ。一見弱々しく見えるのに芯は強くて、泣いてる人が居れば真っ先に手を伸ばす。俺はそんな黒川を好きなった」
「水戸さん……」
「俺もさ、篠田颯吾ほどではないけど、それなりに整ってる方だと思わね?」
親指を自分に向けて「どう?」とばかりにドヤ顔をしてみせる。
それが可笑しくて、つい吹き出してしまった。
私の緊張を解すように、気を使ってくれてる心使いにじんわり視界が滲む。
「だから、考えて欲しいんだ。俺との未来を」
水戸さんとの未来……。
水戸さんは、自社の女子社員だけでなく、近隣の会社の女性たちにも人気がある、我が社が誇るイケメンで、営業成績もトップ。
だからといって、颯ちゃんみたいに他に女の人の影がないっぽいし、世間でいうなら最優良物件てヤツだろう。
そんな人が私なんかに告白してくれる……下さるなんて、この上なく恐悦至極な出来事で、こんな有り難い事はないと思う。
こんな事、きっともう二度とない、一生に一度の神様がくれたチャンスかもしれない。
でも……それでも……。
「水戸さんの気持ちは、凄く嬉しいです。本当、私には勿体ないくらい。ありがとうございます。それでも、私は颯ちゃんが良いんです。颯ちゃんに婚約者がいる事も、きっと近い将来別れなきゃいけない事も、ちゃんと解ってます。解ってて、颯ちゃんが好きだから、一緒に居たいから、りこで居るんです。だって梨々子だと、颯ちゃんに愛してもらえないから……」
「黒川……」
「私も水戸さんと一緒なんです。水戸さんが私と色々したいって思ってくれるように、私も颯ちゃんともっともっと沢山色んな事がしたい。だから、颯ちゃんが私を騙してるんじゃなくて、私が颯ちゃんを騙してるんです。水戸さんが思ってるほと、私綺麗な人間じゃないんですよ?」
水戸さんのドヤ顔に負けない位、意気揚々と言って見せる。