私の告白に、訝し気に瞳を細めた。


「実は、颯吾さんと私、あのパーティで会ったのが初めてじゃなくて、家が隣同士の幼馴染なんです。水戸さんとパーティのドレスを借りに入った隣の家が颯吾さん……颯ちゃんの家で。あの時話しかけて来た男の人が、弟の晴ちゃん」


水戸さんは晴ちゃんを思い出したようでハッと息を飲んだ。


「でも、パーティの時、2人からそんな素振りはなかったし、寧ろ他人行儀な雰囲気だったよな?」

「あれは……あそこで会ったのは本当に偶然で……。本気で颯ちゃんが気づいてなかったから、私も諸事情(酔ってた)で他人のフリしてしまったと言うか……」

「は?気づかないとかって、おかしくね?」

「そ、それは……子供の時頃から十数年くらい、颯ちゃんも含めて誰にも素顔を晒してないので……」

「じゅっ、十数年?誰にも??」


少し身を飛び上がらせ、瞳を瞠らせ私をまじまじと凝視する。


「はい……。両親も、ずっとこんな私しか見てません」


小さく両手を左右に開いて「この姿です」と主張してみせると、水戸さんが唖然とした様子で口をぽかんとさせた。


「私、小学校の時、クラスの男子にずーっとブスって言われて、嫌がらせを受けてたんです。靴を隠されたり、ランドセルや机の中に紙屑を丸めて入れられたり、お気に入りのペンを盗られて使われたり。登校して教室に入ろうとすると『ブスが来たー!』て。『ブース、ブース』てクラスの男子と合唱されたり……」


後、教科書への落書きや、雨の日には傘奪われて、濡れて帰った事もあった。

その翌日は、濡れた土で作った泥団子を投げつけられたり……。

当時を振り返るのはとても辛くて、思い出すと眩暈と息苦しさにベンチの背に凭れて胸を押さえこむと、異変を察した水戸さんが背中をさすってくれた。

息を整えて、冷たいミルクティーを喉へ流し込み何度が深呼吸を繰り返すと、徐々に脈拍も落ち着いてきた。

そんな私を水戸さんは眉間にシワを刻んで介抱してくれる。

誰にも話した事のない過去の話をしながら、冷や汗をハンカチで拭う。

当時、イジメられて泣いて帰って来る度、自分の膝に私を置いて抱きしめ、慰めてくれるのは颯ちゃんだった。

両親が仕事で不在の時、傍にいてくれたのも颯ちゃん。