701.遠赤外線の鎮護‐スイートピー‐

君と何者かとの入り組んだハッキング対決に、リトポスターのような横槍を入れて割り込めば、君を勝利に導くことは出来たけれども、速攻身バレして警察に連行された。
搬出用の階段室のその先に居た君は、女人禁制の深窓で出会って、ブラックジョークの暴漢にひっぱたかれたような顔で驚いていたね。
逮捕されてきたことより、ブラックキャットと呼ばれている疎開‐トップランナー‐なクラッカーの正体が、ネコヤナギが越冬したような私だったことに。
「クラッカーの能力を腕の見せ所だと誇示したくて、三つ巴の争奪戦に競うように便乗なんかしたから、案の定特定されて逮捕されるんだ。」と、断頭台‐スプリント‐へと頭ごなしに列席者‐セレモニー‐の槍玉に上げられて、キュリー温度で成形したフレスコ画のような古都‐ビオトープ‐を、駐機場ごと薙ぎ払えた警察は収穫出来てホクホクだ。

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見逃さないでください。
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数値化した組み飴を数打つ実演販売さながらの表面フラッシュ現象で、代理戦争を手厳しく和議、造営した密教のお社に不滅の法灯を着火させ、入れ食い状態の祭囃子‐スパチャ‐を提唱‐パンナップ‐しながら、芋づる式に変容‐ナポレオン・コンプレックス‐を刺激し、天台様式の教理へと導き神仏習合で開祖、荘厳で名高い霊峰へ満行を続投させて、巧妙化した奉納刀を迷信めいた御神体として崇め奉る。
そんな併合罪‐クリックジャッキング‐擬きの組織との三つ巴に、罠に掛かったフリをすれば簡単に焙り出せるのに、逆張りの目録の目次にも入場制限されて、毒を呷っても運が傾いて参加出来ない、触診さえも予後不良な警察が言えた口じゃないのにね。

そんなことよりも、裏拳‐ハッキング‐をしていた理由がまさか警察の依頼で、とある邪なテロ組織を壊滅させる為に、君が警察と年間契約ばりに手を組んでいたなんてね。
学校ではおちゃらけて夜更かし居眠りが常習の君が、カリスマ的なハッカーでホークと呼ばれている君が、父親に反抗して警察システムやP3にハッキングする君が。
パトロールと称した興味本位でハッキングした情報からテロを導き出し、そのことを父親に伝えた上に検測への協力を一手に引き受けて、善性の純正‐バックネット‐へお手付きされるのを、突風も暴風も未然に防いでいたなんてね。

「キミがブラックキャットだとは驚いたけれど、キミは俺がホークだって分かっていて加勢しただろ?」
「なんで?」
「俺を見ても驚いていなかったから。あと、警察はミスったと思っているみたいだけど、わざと捕まっただろ。」

芯を食ったようにニヤリと笑う君は、私の計算尽くに資する行動だと気付き、二要素認証の拵を見破っていた。
この顔にピンときたら110番だなんて、グラマーなプロポーションでポージングを披露なんて、モザイクをかけたってする訳が無い。
けれど貨車への腹を決めなくても、競争入札‐プレイボール‐を喚起した必需品‐キーマン‐が君だから。
ゴリゴリの要塞と自信作の地下室を掛け合わせた異空間で繰り広げられていた頂上決戦が激戦のタコ足配線でも、甲冑を着用せずとも民泊‐ウインドブレーカー‐で素泊まりしても、腹ごしらえに舌鼓を打ち御代わりで構わない。

物心が付いた時から両親は領分を弁えない梲が上がらないクズで、金欠の児童養護施設はオーナーが変わって追い出されたも同然で、年端も行かない私の定宿は今やネットカフェで、IP電話に一張羅は制服で、中型のスーツケース一つが私のお供。
苦々しい来歴でありながら私が高校に通えているのは、有体に言えば世間体を考えてのことらしい。
ほとんど所在不明の私の安否確認と共に、行動調査報告書不要で監視‐マーク‐出来るからと、君の家に居候することを強制的に決められてしまった。事情を知っている君も事情を知らない君の妹も、シェアハウスに満たないのに歓迎してくれたからよかったけれど。

しかし組織のテロリストの策略によって、警察官殺害の罪を着せられた君の父親は、無法者だとして仲間である警察に追われてしまう。
たとえ君の父親が秘密裏に諜報活動をしていた潜入捜査官だったとしても、その裏の顔に対する権能の域を超えてしまっていたから。

疑問を抱いて加害者に不正を指摘すれば被害者へ和を乱すなと、正しいことが守られず許されないこととして脅しに取って代わられ、オカシクとも選んだ沈黙を受け入れてしまったら、権力の下では判断を仰ぐどころか委ねてしまい、正義の真実より都合の事実が否応無しに優先される。
万年‐シメ‐は十八番の本家本元へ転移、摘出された満杯の授受を譲渡して、救護義務違反の連帯保証人になる前に、波乱万丈の大作からは即退場という寸法。

御前立御本尊のように祀る護国と神輿を担ぎ、書き殴ったような様態の風評被害‐ネガキャン‐を、語弊が天に召されても創建の餌を撒かれてしまったら、定置網‐トラバーサー‐の走りとなる。
いつも真っ直ぐでサーチライトな光が灯る君の瞳が愕然と揺れていて、苦み走った雨乞いが厳戒態勢に屈服しかけていたから。
螺旋階段に浅く腰掛けてミニチュアみたいに縮こまって、下り宮にて衆生の祈願をしているかのような君の隣に、心が洗われるような花菖蒲を携えて深く座り込む。

「泣き叫ぶなら気が済むまで隣に居るけど?」
「なんでそんなに冷静なんだよ。」
「別に。君の父親はそんな人じゃないから。」
「俺の親父のこと知らないだろ。指名手配を受けている人間なのに、なんで俺より信じられるんだよ。」
「確かに会ったこともなければまったくも知らないけれど、あげると言ったジュースを律儀に返すような人の父親だから。」
「覚えていたのかよ。」
「むしろ、そっちが覚えていたことに驚きなんだけど。」

高校に入学して少し経った頃、背後から「売り切れてる!」と叫ぶ声が聞こえた。
振り向けば校内にある自動販売機の前で、お気に入りのジュースが無くてしょんぼりしている君が、友達二人にからかわれながらも慰められている。
私の手にはついさっき買ったジュースがあって、それは最後の一つで、君のお気に入りでもある。
落ち込んでいる君と自分の手元を見比べることもなく、君のもとへ行って「あげる。」とジュースを差し出して、驚く君を置いてきぼりに去った。
次の日のホームルーム前、「ほいっ!」と目の前に置かれたのは、昨日君にあげた君のお気に入りのジュース。
「昨日は助かった、ありがと。」と、地球のアルベド輝く顔でニカっと笑う君。
友達二人に「ヒューっ!!」とからかわれて、「友達に借りは作らない主義だ。」なんて、貸しは作っても借りは作りたくないんだと格好を付けている君を眺めていた。
なんてツボサンゴ的な回想をリベイク。

「そんな理由で?」
「大抵の場合、そんな理由だと思うけど。」
むしろ何も確証が無いからこそ信じられることもある。
「信じる指数が、君の父親がそんなことしないっていう理由でいいでしょ。」

貯蔵された品状の類例を隅から隅まで探し、重箱の隅をつつくような桟で財宝を見付けたかの如く、出土した特番‐うんちく‐を垂れ流すくせに、高級感溢れるフィギュアやベビースキーマなSDキャラを代役にする程へっぴり腰の外交。
味がある直売は断固としてせず、蝶よ花よと発明な置き配を選ぶ特定班など、楽観的に策士策に溺れてソリッドな信用度などまるで無いのだから。
人と屏風は直ぐには立たずの宥め行動の節があっても、言わぬが花の言伝よりはマシだろう。
ポリマーヒューム熱の首飾りを着けられたような感じだったのが、憑き物が落ちたようなアヤメを感じさせる顔に少しはなれただろうか。

テロリストと警察の攻防が日を追うごとに激しくなる中、君の後輩の一人に毒牙がかかり、私と君と友達二人と後輩二人、合計六人で逃げ込んだ先はアイアン柵に白磁の鉢植えが並び、数種の品種の植栽で彩られた、私や君が通う高校の校舎。
しかし武器を片手に迫ってきたテロリストに捕まって、二人組のテロリストと教室の一角に軟禁状態。
君は持っていたパソコンで、友達1とRPG‐ゲーム‐をしているようだ。
もちろんテロリスト側がジャミングしているのか、ネットは一切繋がっていない。
毒牙がかかってぐったりしている後輩1を、友達2と後輩2が心配そうに世話を焼いている。
少し離れた場所にある椅子に座りながら、車窓から百日草を眺めるように、その光景をアトランダムに私は見ていた。

「トイレに行きたいんだけど。」と私が唐突に言えば、体が先に動く武闘派で熟考する頭脳派ではないらしい二人組は、「逃げるなよ。逃げればお友達が大変なことになるぞ。」と言って暑苦しく毀棄を煽っても、ハーネスがあるとばかりに静観して動かない。
「こんな状況の時にゲームをしている人達なんて、友達でもなんでもないから。付いて来なければ逃げ放題だけど。」と来るもの拒まず去るもの追わずな精神を念頭に置いて言えば、大きくは出ていてもさすがに一人付いて来た。
目出し帽すらしない二人組が否定しきれないということは、私が逃げないということを断定出来ないのと同じだから。
君が二人組の隙を付いて隠し、有線ケーブル使って電話回線からネットに繋いで、警察と連絡を取り合っているのが見えたから。
二人組の視線や行動を分散することには成功したみたいだから、見識ある君がコードブックで上手くやってくれることを信じよう。

しかし偽りのトイレから戻ってさあ準備万端というところで、二人組に警察の気配を気付かれてしまった。
しかも二人組以外にも数人居たらしく、警察の突入と同時に銃撃戦になってしまう。
その混乱の隙に教室から逃げ出しはしたものの、トイレに付いて来なかった方の一人と鉢合わせしてしまった。
発砲されながら銃弾を避けながら逃げていたけれど、足が縺れたのか躓いたのか友達2が転んでしまって、振り返れば後方で銃口が立ち上がろうとする友達2に向けられている。
私は咄嗟に友達2の腕を引っ張りながら前方に突き飛ばすと同時に、銃声と鈍い音が響き衝撃が走る。
どうやら友達1が飾られていた花瓶を投げつけたようで、激突したのかのびているのが見えて一瞬だけ安心したのも束の間、私は足に鈍い痛みを覚えて見れば弾丸が掠めたようで血が流れている。
君はぐったりした後輩1を背負って荒い息を吐き、後輩2は怯えて疲労困憊、友達2は立ち上がるも息が上がっていて、友達1も足元がふらついている。
血が床に落ちた形状は円形になるのが常だから、落下しただいたいの高さを割り出すことが出来る。
高さが高くなるほど円は大きくなって、円の周りの散り方も派手になるということで、つまりは血の跡で逃げる先がバレてしまうということ。

被弾した私は君達の足手まといだから、だからこその豪快に肉薄‐ラッシュ‐と息巻いて名乗り出られるのに、友達2は私の右肩を持ち、友達1もそれに続き左肩を持って、二人が肩を貸すように支えられながら逃げる。
「血の跡で逃げる先がバレる。」と言っても、「いいから。」としか二人とも言わない。
その内に再び逃げ込んだ先は奥まったところにある古びた用具室‐パントリー‐で、採光用のトップライト的な物はあれどドアに鍵は掛からない仕様だから、このままここに居ても無尽蔵に冬眠なんて出来ないし、がら空きなフロアに垂れ残った私の血で、いずれテロリストの山狩に遭うのは必至。
スラッグ弾の球速など混雑したコンコースでは、グレーチングに嵌まり樋鳴りにはならないだろうけれど、初心者マークの出役でも害が及ばぬように君と友達達を助けられるなら、荒療治にツリフネソウを添えて今生の別れすら構わない。

「何をする気だ?」
「冗談抜きに、袋のネズミ状態で、何を言っているの?こんなところで、流砂‐ドロップアウト‐なんて、ごめんだから。」

横たわる後輩1の様子を見ている君やその様子を見守る友達2と後輩2とは違い、木瓜のように目敏い友達1が、閉めたドアに向かう私を咎めるように声をかけたから、皆の視線が私に向くけれど、第一陣の陳述がスタッカート気味になっても、美化した言い値でそれを押し通す所存。

「一抜け、するんだから、邪魔、しないで。」
「この状況で、すかしてんじゃねえよ。」

ドアノブに掛けた私の手に開けさせないとばかりに力を込めて重ねて、サムラッチハンドルのドアストッパー状態。
軟派な顔の割に胆力のある硬派で、石部金吉の君の友達らしい行動だけれど、この押し問答は零細な待機電力以上に、所蔵する体力を痛手に消費する。

「そんな、んじゃない。」と言いながら振り払うのと同時に、ドアが乱暴に開き「お前ら無事か?!」と、身構えた私達にスパダリの欠片も無く、強面の顔と大声を御見舞した警察の班員。
見慣れた顔と声に全身の力が一気に抜け、後ろにいた救急隊員が倒れ込まないように支えてくれた。
豊満‐ドレッサー‐な反社会勢力‐モンスター‐だったけれど、出稼ぎかつ下積みほやほやの下っ端ばっかりだったらしく、規格外‐アグレッシブ‐に大捕物でもどっこいどっこいで、讃嘆に万々歳とはいかなかったらしい。

「助けてくれてありがとう。」
「別に、お互い様、だから。そっちも。」
「それは・・・、お前がコイツを庇って助けたから。友達でもなんでもないと言っていたくせに。」
「そう、だけど。私は、友達だと、思ったこと、はないから。けれど、そっちが言ったん、でしょ。」

あの時「私達は友達だ。」と言ったから。
トワイライトな光柱‐アロング‐を君達が失念していても、天涯孤独の私を友達だと思ってくれた人達だから。
求心力のある君達が私をただのパウチなギャラリーから君達の友達にしてくれた、正円の指標‐ビフォーアフター‐。
友達2は自分の言動を思い出したように笑って、救急隊員に運び出される後輩1へ付き添っている君と後輩2のところへ向かった。

「にしても、あの人達は、羨ましい限りだね。」
「はぁ?!」
「どんな理由であろうとも、希望を持っている、みたいだったから。」
「なんだよ、その年で希望が持てないのか?」
「希望を持てて、いるかどうかは、分かりませんけど、絶望なら持っていますよ。友達が困っているのは絶望ですから。」
「そうか。」

奇想天外にはたと気付いてしかと受け取っても、民事不介入とばかりにあぶれることを班員は採択したようで、応急処置されている私をチラ見したあと、上司である班長に連絡を取っていた。
友達1は壁に背を預け腕を組んだまま御冠らしく、ピッケル宜しくいまだに私を睨んでいる。
構体で鋭意な見張りのように居なくても、割を食わないようこれ以上はしくじらないのに。

「終わりました。これから救急車へ運びます。」
「救急車なんて大袈裟な。自分で歩けます。」
「そう言う割に立ち上がれもせず、ふらついてんじゃねぇか。大量出血してんだから我が儘言うな。」
「自分で歩くのが我が儘なら、一体どうすればいいんですか?」
「どうもしなくていいし、そういうのは屁理屈って言うんだよ。」

流れるように担架に乗せられた私を見て気が済んだのか、友達1も君達の元へ向かっていった。
心配性の分離不安症なのか無断欠勤を許さないのか、クロス表みたいな君と友達1との金具‐アーブ‐な結合‐ジョイント‐は、一種の同志愛‐チャームポイント‐ではあるけれどね。

御髪の寝癖も不規則な寝相も無法に悪く、むかっぱらを立てて腸が煮え返っても、信心深く延べ縁石を乗り越えて、備え付けの蹴込み板を右肩上がりに上り、見栄えの良い桟橋を渡った先で、雄大な本尊へ仰せのままにとツイストせずに、愚直に結縁して幕が上がった三千世界へと、従者として運命を共にした後輩1。
こじんまりとした密葬は筆まめに罫紙を使って、透析した便箋に判読不明の白描画で、哀悼の意を表しても哀咽さえ非公開。
木骨煉瓦造の豪邸とざわつくこともないけれど、隣の芝生は青く見えないような巧芸画な墓地で、ボルタリングで捲り上げても蓄熱と断熱がたすき掛けで夕涼み。
トレーナーのメイキングに、ロールプレイングのスクリーンショットに、モーションキャプチャーのフライヤーに、マイブームのオフショットに、グラウンドオープンのベストショットを付けた、社史‐ロッククライミング‐のキャプチャ。

君達より先に家路に着く途中、しらふな婦人会の機織りへランダムに思いを馳せても、私では気が散って装丁の良い掛け軸にはならない。

何でも言ってとか、困ったことがあったら遠慮しないでとか、君の為に何かをしたいとか、役に立ちたいとか、自分が頼られる存在になりたいとか、そういう強い願望を口にできていたとしたら、コルジリネ・レッドスターを飾って、フランネルフラワーの深みにはまり、底なしの愛へ淫靡に溺れるような、単純で愛いな恋に落ちれたのか。
君と交わす言葉にはいつだって密かに反響する愛情が暮らしていたけれど、好きだったとか愛しているとかごめんねとかじゃあねとかさようならとかありがとうとか、君に名乗れるような名前はなくて、私が傷付くことで君を守れていたのならば私は幸せ者であるから、得意の身辺整理‐404 Not Found‐で君の居場所をリノベーション。
君との希望が無いと分かれば、君との未来なんていう幻想を捨てて、裏声の数え歌で新たな一歩を踏み出して前に進むことが出来る塔屋‐ドロー‐になれるのか。

君に出会ったあの日はきっと天中殺だっただろうから、採算の模範のように後悔はしている。
生きていくことに慣れはしないのに、死ぬことは拒んでいたあの時分から、湧水のように澄んだその綺麗な瞳に、私を映して欲しいと強く願いたいけれども、私はビロードの切麻のように美しく生きられない。
童心に帰ったような君の隣に退色した私は相応しくないから、誰より傍に居たけれど誰よりも傍に居たいけれど、ペーペーな私達のニアピンにもならないスリップした友達ごっこはもう終わり。

スペアを含めたすべてのお供を引いて、どこかへ行く為に向かうのではなく、どこからかも逃げる為の正比例の焼失。
背中合わせの反比例‐ベクトル‐で歩いて行けば、どんどんと開いていくその距離は、口が裂けても言えなかった私と気付かないでいてくれた君との間にあった心の距離に思える。
まるで漆喰‐マシン‐で塗り潰されたみたいに、私の足跡をどこにもなくして、君の視界の中の私だけを居なくして。
私の世界が君一人を騙しているみたいに、私が耳にしたい君の声だけ聞こえて来ないようにして、この名も無き感情を感じないフリをしたら、私は記憶の中の君の笑顔にまた触れることが出来るのだろうか。
いやそんな穂先よりこの花穂を受け入れようか。
それでもいいと、私に幸せをくれた君が幸せならばと、そう思えたのだから。
カスミソウのような君の補色残像と切なさが込み上げて陣取る、平坦ではないこの心模様もきっと日にち薬だから。
君が居るからこその要衝から私の足音だけが遠ざかる。

仲見世に寄る妹よりも先に戻ってきた君を迎え入れた、明かりの無い人気も無い静まり返った我が家。
先に帰って居るはずの私を君は呼ぶけれど、返事が無くてとにかく不思議で、だけれど。
部屋に置いてあるはずの私のスーツケースが無いことに気付いて、君はすぐさま家から駆け出して、右往左往に道を駆けて私の名前を叫んだと思う。
いや叫んでくれたよね、きっと君ならば。
でもね、君がいくら呼んでも何度叫んでも、私には届かない、届かないようにした。
だけれども、私と出会う前に戻っただけの話だから、心配しないでもすぐに慣れるから。
私が残してしまった5文字の置き手紙なんて紙切れ同然、むしろ紙くずとして捨ててもらって構わないから。

702.ブルースターのクロシェ柄はユーカリのフェルマータ

君と私と警察とで実勢‐スタミナ‐を真面から総結集して、とある犯罪集団であるテロリスト達を地べたからサイズアウトの如く、千客万来の迎賓館から断末魔の墓所へ退けることに成功した。
一味を一網打尽にと完全には壊滅出来なかったけれども、君の父親が焼成に身命を賭してまで戦ったことは、命取りな職業病‐フォールスチャージ‐であると覚悟の上でも、人の口に戸は立てられなくて抵触を言いまくられたとしても、筋骨隆々で向学心‐インテリジェンス‐な君の父親の仲間である警察が後を引き継げば、陶板名画のように利発で聡明な技術の粋を集めて、潔癖に全うしエキスパートに成し遂げるだろう。
協力者であった君や私の役所‐プリー・バーゲン‐はすべて終結したから、物々しい朦朧体‐シナプス‐を醸し出すいらんことだらけの私は、兆候‐リファレンスチェック‐なく自ら君の元から去ることにした。
君達との高校生活という高い密度‐グロリア‐と飽きが来ることが無い果報者の花盛りを、留保すること無くいつもの今を下方修正して、高卒認定試験の合格と同時に児童養護施設を退所すれば、用済みの私は名実ともにごめんあそばせと行方を晦ませる。

けれどまた浅からぬ犯罪‐ヘドロ‐があれよあれよと言う間にそこここに、ギアを上げたノックマシーンばりに急増、取扱注意の球種‐ショールーム‐だと思わされることもなく、手入れが行き届いたガーデニングのパティオから、天蓋付きの別宅‐ゲストルーム‐へと招くのは、もちろんツァイガルニク効果でホームランのあのテロリスト達。
そもそも論として君の元から去っても隠れ住んでいる訳ではないからか、ご丁寧に私にも挑戦状が送られて来てしまった。
私はポピーのように決して優しい限りでは無いし、テロリスト達の語法や図解が雑過ぎるだけなのだけれども、このままそのままに偶発的にパーになるように放置出来ないのは、ジェントルでダンディな真剣勝負‐サラブレッド‐とは程遠く、手詰まりの仕返しに石を投げて咒い弱みに付け込むように、オンボーディングよろしくインパチェンスな友達2が巻き込まれていたからだ。
最高気温がお見逸れしましたと有数の40°C以上の酷暑日ではないけれども、35°C以上の猛暑日や25°C以上の夏日でもない気密だから、30°C以上の真夏日の表示領域‐ビューポート‐のアンケートは難しい。
ブロアーな動輪‐ドライブイン‐なんて便利なものは無くて物足りないから、長旅‐ハイキング‐みたく遠路はるばる毛細管現象に乗り継いで、久方振りへの警察へ手包みの挑戦状を渡しに行ったら、ホストだからとわざわざ懐かしの部屋まで案内されて、そこには今も変わらぬ姿の班長と班員と、更には新たに加わった部長とやらが出迎えてくれた。

確か警察官の階級は、上からこんな順番だったはず。

警視総監
警視監
警視長
警視正
警視
警部
警部補
巡査部長
巡査長
巡査

警視総監から警部補までがキャリアで、警視長から巡査までがノンキャリアだったっけ。

階級が分かったところで門主にさえも態度を変えるつもりは無いけれど、マニアックに熱く語っても気苦労が絶えない班員と、常日頃からハイブリッドな板挟みの中間管理職な班長とは違い、部長は基本性能‐タイプライター‐のような手技の気構えで、一計を案じた別件逮捕の添削‐トリミング‐に、撮り下ろしの議題に石臼を挽いて勤しむ、エッセンシャルな命令系統‐プロテクション‐タイプに見える。
手が込んだ絢爛豪華な品種改良を箱詰めにして人気を博し、反芻の因習‐アクティビスト‐で策があるとモノ言う株主に対して、個を優先し過ぎて暴走しないように規律を考え、しかしながら時に個を優先して世界を考え、一極集中‐コンパクトシティ‐を統制するインティマシー・コーディネーター。
更には争いごとが起こらないように根回ししながら鎖樋‐クラッタリング‐して、もし被検体同士の予期せぬ争いごとが起こったとしても、スタジオでコーナーのVTRを見るコメンテーターばりに、贈呈された牡丹とにじり口でどちらかにも加担せずに、視線誘導で産声を上げ続ける被害を摘み取りながら、砂糖依存‐リピーター‐が最小限になるように動き続けるのは、コールウェイティングのレコーディングのように織り込み済み。
プレゼントとして送った絵画を密通した画廊を介して買い戻せば、間接的に金のやり取りが出来る古典的なモノから、クラウドファンディングの返礼品として紛れさせて、直接的にナニカを密売する現代的なモノまで、イタリアのレッチェというときめくような言葉だけで、靴のヒール部分に隠された証拠にお釈迦を進呈。
発給された組子の勘合を嵌合することが趣味みたいな、笑い声だけなら開放感のある悪の大魔王みたいな、屈託の無い笑顔こそ頗る機嫌が悪いみたいな、細かな偏食‐レタッチ‐を繰り返すことをとても好みそうな一躍‐キャプテン‐系列。

「久しぶりだな。」

ご丁寧な自己紹介に挑戦状の引き渡しも済んで帰ろうとしたら、部屋には先客もとい久方振りの君と友達1が居たことに今更ながら気が付いて、律儀にも終わるまで黙って視界に入らないようにしていたようだ。
またしても友達1はメンチを切るように睨んでいるけれど、あの時とは違う真新しい辛辣な意味だと理解出来てしまう。
一方君はというと友達1の覇気のある検問に口を閉ざしていても、私が居ることを受け流すことは出来ていないようで、紡ぐ言葉を探しきれずに口を開け閉めするだけで言えずじまい。

「今までどこに居たんだよ?」
「別にどこに居たって関係ないでしょ。」
「突然学校からも施設からも居なくなって、俺達がどれだけ探したと思ってんだよ。」

正式な手続きを経て児童養護施設を退所したから、行方不明者としては受理してくれなかったみたいで、警察としても協力者としての功績の事実と犯罪者かつ未成年という真相を相殺して、ホークと呼ばれるハッカーの君のことはもちろん、ブラックキャットと呼ばれるクラッカーの私のことも口外しないことを選んだようだ。

「《友達2》だって心配していたんだからな。」

私を友達だと言ってくれた友達2は歯痒くも既に袖の雨となっていて、後輩1の告別式と同時に裏切りが発覚した後輩2は、遠慮しいの添い寝‐ドッキリ‐かと思うほどに、改変した生態‐ヘクタール‐の在り処ごと行方知れず。
しかしながら最終形態‐バックヤード‐を含めたその全てが、公表‐ローンチ‐されずに隠蔽されているということは、その埋葬された霊障の証拠を掴んでいるということで、至るところにある審理の櫓の原画‐パネル‐には、応援部隊の肉声を含めたピンからキリまでの捜査情報が書かれている。
観光地‐ゲレンデ‐の守衛‐バリケード‐に伝授する随意契約の君が既に居るならば、鳶に油揚げをさらわれる私は衍字であるから、この額絵‐ビュースポット‐には復刻‐イートイン‐の割高は不必要で、わがままボディの内部留保‐テイクアウト‐の割安が然り。

「それ、届けに来ただけだから。」

カモミールを添えてだるまさんが転んだに誘われても、憂鬱で絶食な退屈凌ぎにもならない思い出話に、宴もたけなわが占領して花を咲かせる気は無いから。
時計回りのオープニングと反時計回りのエンディングで、もう用は済んだとばかりに今度こそ帰ろうと踵を返す。

「キミが必要なんだ!」

背中に投げかけられた部屋の外‐フロア‐まで響きそうな音量の言説は、現存するそんな感情は溜めるだけ溜めておいて、簡単に爆発させずに必要な時まで取っておいて、前段階ですらえらいこっちゃとばかりに急進的なラベンダー。
一瞬シーンと凍て付いて急速冷凍‐フリーザー‐してから、頭突きされたようにざわりと空気が震えて、落ちた水滴が波紋を広げるかの如く、微熱が竈で発酵して熱帯夜へ着実にそれは広がっていく。

「え、ぁ、その、えっと・・・」
「鍵。」
「へ?」
「鍵。妹ちゃんは学校でしょ?」

意を決したような初耳の嘆願が告白じみていることに気が付いて、そしてそれがすぐさま到達して自覚してしまったから、顔を真っ赤にしながらしどろもどろに全振りだけれども、そんな君に苦しい言い訳を言われる前に素通りして、出戻りのような私は手を差し出しながら君の家の鍵を要求する。

「何かリクエストはある?」
「え、何の?」
「夕飯。」
「あ、えっと、オムライスで。」
「了解。」

どれでもいいとかどれかだけとかではなくてどれもがいいのだから、君は知っているのか私は教えたいのかその哲学は分からない。
けれど逆さ吊りすら姿を消した私を呼び戻せるのは、礼儀正しい老骨な使用人ではなく紛れもない君だけ。
のっぴきならない切実な事情が側面の材質だったとしても、切々とロザリオに祈る君が私を必要としてくれているのならば、逸れた迷子がやっと会えたようなジャスミンな関係であったとしても、ハズバンダリートレーニングのように平気なフリをして、恩師‐フリースクール‐の炊き出しのように一大事の下支えとして、ハンドキャノンでもロケットランチャーでも撓みを撤去、何でそんな話をとは思うこともなく全面協力をしよう。
色彩豊かな水彩画の福寿草に紙風船のぼんぼりの万華鏡で、夢みたいな夢の続きを引き続き、微力ながらも神苑‐ロマンチスト‐に始めましょうか。

洒落にならない避けるべきものを身になるように予習させることは、悪意のある者にとってはこちらの守りたいものに対して毒となるものを、教えることになってしまう持ち切りの浪曲‐カンファレンス‐。
団員‐ドーパミン‐からの御布施‐カネ‐を待つだけの持つ者はもう古く、正確な情報をいち早く持つだけの者では既に出遅れて、真実か否かは問わずに発言権‐ゴールポスト‐への影響力‐ハンドリング‐を持つ者、それが時代に発出を言い付けられる天下の権力者‐CEO‐となれる。

誰でも出来るけれどもやりがいのある人気を食う満員な仕事であり、やる気次第でいくらでも稼ぐことが可能な高額収入かつ好評な案件、人見知りでもキャリアアップに最適でもあるからこそ一緒に成長しましょう。
などといった書いていないからと言って本当に記載が無かったのかと疑わしくなるような、あまりにも育成に詳しいことを書かないというより書こうともしない強行策‐ブランディング‐でも、粒立った突起‐ポテンシャル‐さえあれば全くの初心者でも大丈夫みたいな、効果覿面に徳を積める堆肥の着工の誘い文句はとても優雅なのに、名物に旨い物なしなその中身は息も絶え絶えに真っ黒。
同じ仕様の御仕着せを身に纏うグラマラスなネグリジェの掲載に、ありもしないことを長々と心を動かされるようにフワッとしたことを書いていて、洞窟‐ファサード‐の隠し部屋‐アーチ‐の放物線‐ロケーション‐は抜群だと、MVをPVに変えて物価高騰‐プロモーション‐すれば、読みが甘くても柔肌‐テンプテーション‐に過ぎないから、精神論も根性論も脱臼しても堪え忍ばないと罰(バチ)が当たると、お淑やかなハズバンドから追熟‐グルーミング‐されて信じ切ってしまったから、覗き穴からたらふく不貞行為へ唆されていることに気付かないまま、度忘れに逸れた良からぬ悪い道にナビゲーションされて進んでしまうのは、図らずも遠からずではなく配架な死刑宣告の読みが当たっただけ。

「そんなに警戒を剥き出しにしなくても、何も取って食いやしないよ。」

クセつよワイルドとは程遠く人の懐に入るのが上手い根明の強襲、親和性の高い心惹かれる形状記憶されたいなせな顔をして、統治者の幹事が近影を晒してでも先頭に出張って、軽量な計量で貴公子ばりに恭しく宥和‐ファセット‐を狙いに来る。

「まだ何も終わっていなくてね。やっと始まったばかりなんだよ。特別性も特有性もあって一隅を照らせる、類を見ない遠心力‐セントラル‐な人材が足りないんだ。だから、希少価値‐ハイレベル‐である《キミ》と縁付きたい雇い主として、試合巧者の竣工としても勧誘‐ピックアップ‐しに来たんだよ。」

輩出された駆け落ち‐トロフィーハンティング‐を巻き上げるかのように、旗揚げ‐レジューム‐に伴って糖度高めの悪徳商法で、ヒエラルキーの開運グッズを爆買いに買い漁ろうとしたとしても、いくらイケイケの殖産興業を手掛けて逆玉の輿をチラつかせても、大言壮語の空焚きでは似たり寄ったりの分譲‐ボーネルンド‐で、化粧詰めされた経歴詐称の猫に鰹節であるに過ぎない。

「けれど、聡明‐ブラボー‐な策士‐パーフェクトゲーム‐が出来る、《キミ》の供物‐ノゾムモノ‐が分からないんだ。」

人知れぬように初競りの天窓の背後を取りたいからといって、摘果‐パーソナライズ‐された上げ膳据え膳に加えて、軽薄短小で尻軽にメートルを上げた引出物‐ハッピーアワー‐で釣ろうとするなんて、長蛇を逸する失策をスロープへ陳列するに匹敵して、いかにも買い控えを推奨する悪名高い悪の組織って感じで、鏡台から花を散らし手折られるだけの抗議の自殺なんて、バイオマスな情事‐デュエット‐の事情の問題提起にしても、稼働率を上げる為に懐に飛び込むにしても、なんとももったいなさすぎる。

「いくら多才な店構えで鬼才に朗読されても、人間工学‐ゴールデンタイム‐が分からないなら、寝返らせるなんて尚更無理ですね。」

国賓待遇のイグミレーションで白い結婚の発生源へ整理券で呼び込まれた、窪地‐ケマンソウ‐へのカスタムな移築も移設も、医学的他覚所見や見地の尺度を算出なんてしなくても、音読‐おまいう‐の腹筋崩壊で備蓄‐デッドストック‐に草が生えて、シティボーイの馬鹿げたウザ絡みなジーザスを即決でお断り。

しかしながらあわや警察からは信用のがた落ちで、裏切りの密会だと問い詰められてしまうけれども、滅相もない上にそもそも密会ですらないのだけれども、防犯カメラからピックアップされたサムネイルは、随分とメジャーどころがせしめていたようで、近辺を旗竿地のような場所でフェンス越しに安全を確保して、防犯カメラの位置もコリジョンコース現象みたく不利になるように計算した上での、破砕帯のように仲間割れを狙った痛烈な関連痛‐テンダライズ‐。
もともとから私のことは出費がかさんでも勉強(値引き)する気は無く、小腹が空いたからジビエでもとはならず立ち食いに食べ応えもなく、一聴に誤審でバンザイして(諦めて)いる感じがしないでもなかった。
知らぬ存ぜぬのサンルームの私は疑われ、知らぬが仏のサンルーフの君は追い詰められる、無観客で不鮮明な盗用‐ホッピングラッシュ‐は邪推の受難に見舞われた。

自分を思って言ってくれた言葉の数々はいつか自分を陥れる為のものなのかと、こんなの普通ではないしこの先に何をやらされるのかと、そしてもしもやった後の後がない状態に何が待っているのかと、内部告発気味な証拠があるから切り捨てられないからなんて、後年にも高を括れなくて自分の身も危うくなる。
それに対して今の言葉は聞かなかったことにしてやるという優しさか、言いたいことは理解したという後ろめたさか、どちらなのかとカフェウォール錯視を誘発する引くに引けない泥仕合を、待った甲斐があると君に千摺り‐オンリー‐な執着を示すのは、激流の勝ち抜き戦を触発‐スヌーズ‐しまくって無傷‐ビブグルマン‐を自称する空前のサイバーテロリスト。
自分はペアガラス製の揺りかごの中で安全に守られているのではなく、理想の世界‐エンパイア‐を創り出す設計図を、描くことに囚われているピカイチな精霊だ。
聖霊の礼拝堂ごとエレガントな自らが一定程度狙われるのは、真下の世俗から見上げる漬物石的な力を持つ者の証とほざき、自分は通り一遍とは違うという割れんばかりの自尊心。

不意打ちと妨害工作でわざと嵌めて潜在的にいびっておいて、人質を助け出せるかなどと君をチャレンジャー気取りにさせておいて、君が自分よりも下であるから手も足も出ないと驕って、ライバル視して生み出す内戦の戦火は黒煙も黒炎も上がって、自分の方が君より上だと確認するために暴徒化した家訓‐デュエル‐。
しかしながら、模型‐モデリング‐の銘菓‐モチーフ‐ばかり増えていくけれど、決めポーズで降誕する造形の絵付けにはまだまだ程遠い。
サイバーテロリストが見ていることも聞いていることも見越して、居場所を特定して警察が到着するまでの時間稼ぎにと、音声も映像も乗っ取って君と朝焼けな会話をしよう。
私が壊した狭隘‐カプセルトイ‐からするりと君が入って(侵入して)、すーっと滑空する君にちょこんと乗った私が昇華‐フォロー‐すれば、先制パンチのバフどころか特注の隠しフォルダよりも隙が無い、突破なんて生温い機能美‐アクロバティック‐な伐倒は、加算ではなく乗算のターンオーバーで抉じ開ける助太刀‐ノッキングハイスピード‐。
サイバーテロリスト自らが単なるゲームと称したのにも関わらず、痛いところを突かれてしまったのか嘘が付けずに、その話に触れられたくないからか素に戻って下手をこき、半乱狂に苛立って静まりきることなく愚弄に呂律が回らなくなって、下手を打って知らず知らずの内に転倒したら嫉(そね)みに自爆。

T型人間の君はハッカーで、構築するのが得意で攻撃は苦手なハッキングで主‐ガイド‐に動いて。
I型人間の私はクラッカーで、破壊が得意で守るのは苦手なクラッキングで補助‐サポート‐して。
得手不得手を補い合えばショルダーハックなんてしなくても、タッグを組んだ布陣は完璧にミッションコンプリートして、相性抜群で一心同体の特長な意匠は褒章もの。

「一歩間違えれば、俺も《サイバーテロリスト》と同じになっていたかもしれない。」

サイバーテロリストは自分を誇示したくて誰かに勝ちたくて、君に勝負を挑んで倒すことに意義があるとばかりだった。
君もモロに命のやり取りはしないまでも、物珍しくからかったり楽しんだりしていた節があるから。
罪を罪と思わずに賞レースのようにただただ強さを目指して、強い敵だと尚の事ワクワクするような戦って勝ちたいがために戦うような。
可もなく不可もなくな等身大で立位に再出発からと負けないためではなく、空き家を繁華街へ倒壊させるのが気持ちいいからと、控室‐バルコニー‐から勝つためだけに戦うような。
ミレニアムな歳月をかけた個展‐ピラミッド‐のエンタメが完成すれば、そこで持続が止まってしまって綻び崩壊が始まるのではなく、衝動のまま獣のようにこんなところで終わりではないと、デストロイヤーの業態は客間の座敷を開場して運試し。

「一歩も間違えなくても一歩間違えたとしても、君は《サイバーテロリスト》とは同じにはならないよ。」
「慰めはいいよ。」

機敏な暗転は甲乙付け難いと落胆して傷心の君へ、近すぎると逆に見えなくなるのかと理解して弾き返す。
履修した許状を断罪してコペルニクス的に校正出来る君は、些事な非礼の所縁の解離にも気付ける人だから。
それでも盗人にも三分の理はオシャンティーな様式美だと君は訝しむ。

「知識はいくらあっても邪魔にならないと思う?」
「なに?藪から棒に。」
「膨大な知識があるからこそ、その知識に雁字搦めにされてしまう時もある。いくら知識があっても《サイバーテロリスト》の知識は偏っていたから。善だけでも悪だけでもなく善悪両方持っている君は、《サイバーテロリスト》と同じになるはずがないじゃない。」

目の前が真っ暗な崖で一歩踏み出せば崖下真っ逆さまでも、半歩でも振り返れば歩いて来た道以外の地面も広がり続いているのだから、歩いて来た道が見えないのは超えて来た壁があるのだから、標高は中腹で更には麓からは急勾配であって引き返せなくても、囲いの中で誰にも頼れず声もあげられず胸の中で叫ぶことすらも諦めて、ただただ受け入れるしかないことはなく、国生みの三貴神らしく枝分かれした雨樋のように別の道をゆけばいい。

「まあ、次世代の神になりたいと奮起してバイオテロを起こしたり、反乱分子‐アンチテーゼ‐を睨(ね)め付けて対抗したりするより、北側斜線制限も日影規制も天空率も関係無く、発信地からダイレクトパスで人工衛星を落として、鉱脈の目釘ごと治世のすべてを無抵抗に、地球ごと終わらせた方が至極簡単だけれどね。」
「人工衛星とか地球とか随分と壮大だな。自分はどうすんだよ?」
「寒気がするほどに自分が助かろうとするから色々ややこしくなる。AIを超えたAIGがASIになってMRSAになったとしても、グロリオサを見ようとすればするほど撮れ高目掛けて近付けば近付くほど、空襲も空爆も鰹節を猫に預けることにしかならないから、忽領にはなり得なくてやもすれば遠退いて味噌を付けるだけだよ。」
「達観してんな。」
「別に。まあ過去に色々あったから、かもね。寝て半畳起きて一畳って言うでしょ。失意泰然の得意冷然で何事もほどほどが良いのが当然。そうでなきゃ私はここに居ないから。」

死んで逃げて悩みも楽になるのか生きて苦しんで苦悶しても挑むのか、いやなんだかんだ言っても不遇でも精力的に、棺を柩にしない死んで花実が咲くものか。

「捌けられないゴタゴタに巻き込まれた上に、身廊の正面突破に君一人で立ち向かって戦うことはないよ。現実問題、何事も一人きりでは無理だしね。引っ込んでいては好き放題やられるだけだから。こちらから行動を起こさなければならないと思っているよ。」

行動を読み切ることが出来なくても離れていても手伝えるように、USBブートのビルトインへ先見の明‐プランニング‐。
既存の細工‐センサー‐に手を加えた飛び道具で、ヒヤシンスのストリーミングリレーを繋げられるように。

「それに私も一人じゃないし。」

君に私はオーバーヒート状態で必要無いと思ったから離れたけれども、私を繋ぎ留めているのは警察でも義務でも使命でも友情でもない。
少し相談していいかとか実は悩んでいることがあってとか、弱みや悩みを打ち明けて弱さを見せることは想像以上に勇気のいることだ。
自分の不安や弱点を話すということは私ならば受け止めてくれるという、吸い込まれるような深さで心から信頼している証の表れだと思いたい。

「君が言ったんじゃない、私が必要だって。気安く頼られて使われるのは悪い気分じゃないからね。」

高設に据え置きした最古の晩成であるインポスター症候群を、斑でも咀嚼して一気に飲み干したら達眼‐ダッシュボード‐。
君を見るのではなく君の見ている方向を、剣を振るう君の背後から振りかぶるモノを、同じ方向を目指す私が日本刀で後ろ手にモノと交えれば、同じ小節の展望台から一緒に見ることが出来るだろう。

君と私と警察が利害の一致で手を組んだサイバーテロリストさえ退けてしまったからか、業を煮やしたテロリストが君の妹を秘密裏に人質風情にして、君がシャドーボックスのように何重にも閉じ込められてしまったところは、メインシステムがその性質上外部のネットワーク回線からは切り離されている施設。
建物内部よりメルトダウンからメルトスルーの放出を狙って、チャイナシンドロームを引き起こすことが目的。
君の妹は無事に奪還されて保護されたものの、暴走したメインシステムの制御‐スリープ‐と施設の強固な防犯警備の解除‐ロック‐と出入り口に張り巡らされた電子爆弾の無効化‐シャットダウン‐は、いくら君でも止めたり避けたり切ったりと同時には辿り着くことが出来ない。
そしてメインシステムの接見にかかりきりになってしまうから、併発した伏兵のような防犯警備と電子爆弾にまで手が回らない。
しかもご丁寧に遮断された場所なのにも関わらず、君の様子を専用アプリで動画の独占生配信をする念の入れよう。
もちろん視聴出来るのはURLを送り付けられた警察だけで、セミファイナルに呼び出された私と友達1はもちろん、現地に居る君でさえ世界中にある施設のどこに居るのかが分からない。

「とにかく、飛行機や船ではなく車移動であったことから国内は確実。連れ込まれた場所と移動時間からみてもここからそう遠くは無い。」
「だったらこの辺はそういう施設がありますよ。御誂え向きに周辺には都市部のような民家がなく、インフラの整備も間に合っていなくて不十分だったはずです。」
「詳しいじゃないですか。」
「大学の授業でやったばっかりなんで。横ばいである田舎の整備は急務だと。」
「なるほど。そこならば設備的にも時間的にも合致しますね。しかしあまり悠長にしている時間はありませんが。私は施設長か責任者に連絡を取り爆発物処理班も向かわせる。班長は班員と共に先に施設へ向かってくれ。」
「「了解!」」

友達1が広げられた地図の古株に当たる一地域を特定して指し示せば、道筋が立ったとばかりに部長の号令を合図に皆が出立準備に取り掛かる。

「ついて行かなくていいのか?」
「私が行く意味が無い。それに点数稼ぎに利用されるのはもうごめんだから。」

頭脳派ではあるけれども現場に行っても役に立たないと自分で理解している友達1自身はともかく、ここに居るとばかりに動きを見せない私に友達1が問い掛けてくる。
私の放った言葉にピリッとした空気になってしまったけれども、滂沱な友達2の雪化粧に自覚があるからかそれ以上は何も言われなかった。

「応援を向かわせましたから無謀な無茶はしないように。」
「そんなことを言ったって、この防犯警備はそう簡単には通り抜けられませんよ。電子爆弾に囲われているのを掻い潜るのだって、今から結審に参入されたって時間が足りなさすぎる。」

今のところ止められたのは電子爆弾の時限装置だけで、遠隔操作は出来ないものの防犯警備を止めても電子爆弾を処理しなければ、フィルタリングされたままでメインシステムと君には到底辿り着かない。

「大きな悪の為に小さい善を切り捨てる、それが当然なんですよね?妹を助けてくれたことには感謝してますよ。けれど《友達2》のことは許せませんから。俺がやらなきゃ誰がやるんですか?やってやりますよ、俺がホークってところを見せ付けてやりますよ!」
「ヤメロ!ヤケになるな!」
「落ち着きなさい!」

鳴り止まない注意喚起の警報音。
君が何かしら間違えば三者凡退。
欲しがり提灯記事のお詫び行脚。
身に付けた技術を裏切らないのは自分を敵に回したくないから。
持ち場への矛先をナチュラルに鈴なりにすれば我ながら有望株。
桁外れのプラセボでもそれがお好みならそう演じ振る舞おうよ。

「後は任せた。」
「了解。」

❝6 18 15 13 8 1 23 11 20 15 2 12 1 3 11 3 1 20❞

❝From Hawk to BlackCat❞

(26個しかなくても26までの数字が届けてくれる裏写りの筆跡)

瞬間、君の紋章がこの部屋にある警察のパソコンをクドいほどジャックする。
君が跳ね上げた自発性で大幅に弾く同軌道上を行くことで、私の自己流である後続弾の途上に死角‐ブラインド‐が生まれる。
試算された視程外の積み荷‐パプティクス‐、素振りを出稽古ナイズした一義的な所謂隠し玉ってやつ。

「なんだこれは?!」
「は?なに?」
「きた。グットタイミングなのはアルバトロス並に流石。」

部長を含めた警察や友達1が騒然となっている中、私はおもむろに警察のパソコンを操作し始めて、一台のモニターに映し出したのは点在するいくつかの住所。

「ここに行ってください。少なくともこの配信を見ている人間はいると思いますよ。」
「どういうことですか?」
「専用アプリとはいえ、生配信しているのだからネット回線には繋がっているでしょう。それを見ているのはここに居る人間だけじゃありませんからね。」
「・・・分かりました。向かわせましょう。」

苦い顔をしながらもオーディエンスの理由に納得して、取り逃したら元も子もないと部長は応援部隊を向かわせる。
施設前に到着しても足踏み状態で手をこまねいている班長と班員が、こちらの会話を聞いていたようでイヤホンから割り込んできた。

「お前、利用されるのはごめんだとか言ってなかったか?」
「利用されるのはそうですけど、協力ぐらいしますよ。皆さんを信頼していますから。」
「お前がそれを言うか?」
「どの口が言っているんだ。」
「私の過去なんて内部調査とかで根掘り葉掘り調べて分かっていますよね?私は誰も何も信用しません。最初から一切期待していない方がダメージが少なくて済みますからね。」
「じゃあ何故こんな協力みたいなそんな真似を?」
「その人間性で信用させたのはそっちですよ。石に布団は着せられずですから《君》の言う通りですけれど、それでも血が滲むような過酷に命張っているの知ってますから。《友達2》は怖かったと思いますし助けて欲しいと思ったと思います。けれど助けてくれなかったとは思わないと思いますし、ズタボロだろうが何だろうが恨みませんよ。そのやり方に賛成は出来ませんけど理解は出来ますから。それに《君》の父親の職場ですから、その人達のことを私はそもそも悪くは思わないですけれどね。」

壊す方法しか生み出せない能が無かった私に、壊すことが出来るなら救うことも出来るからと、助ける術を教えてその機会をくれたのは、君と警察だ。
生まれ変わったというよりは本来の磨かれた輝きを取り戻せたような気がして、そんなんだからなのかその声援を信頼出来た気もする。

「じゃなんで、お前も《君》もあんなことを?」
「あっちの音声がきているならこっちの話し声も筒抜けだと考えていいと思います。そういうの楽しんでいるタイプでしょうから。今は音声を切っているので大丈夫ですけれど、ただ気付かれないようにしたかっただけですよ。私も《君》も本気で思っていません。」
「つか、さっきから何やってんだよ?」

会話しながらもタイピングする手を一切止めない、オンステージ状態の私が友達1は気になるようで。

「《君》のUSBにバックドアを仕込んだ。テロリストもサイバーテロリストも《君》に執着していたから、私よりも《君》に接触する確率が高いと思って。案の定そうなったし。自走式のマルウェアのプログラムなんだけれども、理路整然としたルールベースのエンドトゥーエンドであるし、プロトタイプとはいえ急拵え‐ファルセット‐の上に、テロリスト‐アッチ‐に気付かれずに警察‐コッチ‐に繋がないといけなかったから。裏でこっそりと作動させているから時間がかかると思っていたけれど、予想より早かったから助かった。」
「じゃあ今施設と繋がってんのか?」
「ううん、ただ回線を一方的に繋いだだけ。《君》が閉じ込められる前に施設の外に投げ捨てたであろう、モバイルルーターを介しての遠隔だから回線の強度はかなり弱い。今度はこっちからアクセス出来るようにしなければならないし、他からの攻撃に備えられるようにもしないといけない。それに意外と手数が多いから足場が悪いとやりにくくて仕方がない。私がついて行かなかったのは勝手が違う遠隔より、最新鋭とはいかないまでも設備が整っていて回線が安定している、何より慣れているここからが良かったから。意味が無いって言ったでしょ。」

頭脳派でも武闘派でもハッカーでもクラッカーでもホークでもブラックキャットでも無い、無くて良いのが灯籠‐シグネットリング‐。
私は私のままで良い花暦の香炉。

「主語を付けろ!主語を!意味分からねぇだろうが!」
「だから意味が分かったらそれこそ意味が無くなりますよ。」
「お前は、そう・・・いつもいつも屁理屈言いやがって!」

別に屁理屈を言っているつもりはないけれども、ハッスルしたキレの良いツッコミは前にもそう言われた気がする。
別にそうじゃないことだけは微量でも分かって欲しいとか、理解を求めて訂正も修正もする気はないけれど。

「ただ協力はしますけど、それには条件があります。」
「条件?」
「防犯警備のファイアウォールを壊す許可が欲しいんです。私は《君》みたいに細かいのは得意じゃないんで、初めから壊した方が早いんです。もちろんセキュリティホールにならないように、ファイアウォールごと私のプログラムで覆った上でやりますけど。後で時間を貰えれば再構築は可能です。」
「・・・分かりました。ブラックキャットとホーク、いえ、《私》と《君》にお任せします。」
「了解です。」

この場でそんな許可が出せるのは部長だけなのだけれども、そんな信任するような思いを預ける言い方も出来る人だったみたいで、結構根は班長や班員と似ているのかも知れない。

「ファイアウォールを壊したらそっちの無線に繋ぎますから、各々の防犯警備と電子爆弾の処理はお願いします。私は《君》を手伝います。」
「分かった。万全な準備を整えて待っている。」
「・・・必ず止めますから、友達を、・・・《君》を助けてください。」
「ああ、任せておけ!」

班長の心強さと班員の力強さの頼もしさの食べ合わせに、いつも通りだと気持ちが扁平になるのは、この状況の下では良い傾向だと言えることにしておこう。

「いけるのか?」
「大丈夫、粉々にするから。」

気強い私に友達1は口角を上げた。
プログラムで覆ったファイアウォールをぶち壊して、防犯警備と電子爆弾を流れ作業のようにそっくりそのまま託したら、メインシステムと対峙している君の元へ向かいましょう。

壊滅するギリギリ寸前ではあったけれども扉越しに免れることが出来て、安全地帯と高を括ったテロリスト達を問題無く鎮圧して、脱獄なんて決して許さない身が持たない独房の獄舎へ、代理人‐パイプ‐ごと首根っ子を押さえて収監すれば、トドメの一撃で方が付いた反則負けは見事の見頃。

「よう、おかえり。」
「おう、ただいま。」

班長と班員と共に接戦を値切って帰ってきた君を、友達1が迎え入れて草の根運動‐ハイタッチ‐。

「あれ?《私》は?」
「ん?さっきまで居たはずだけど。」

部屋を見渡してみても後始末の指示に忙しい部長や細かい後処理に追われる班長、班員も後片付をしていて部屋全体が忙しない雰囲気ではあるけれども、防犯警備のファイアウォールの再構築をしているはずの私の姿だけ見当たらない。

「まさか・・・!?」
「おいっ?!」
「どうかした?」

ギクっと焦った様子で走り出そうとする君に、それを止めようとする友達1の何とも言えない不思議な光景。

「あっ・・・」
「どこに行ってたんだ?」
「これ。喉が乾いたから。後はついで。」
「おお〜」
「なに?」
「いや・・・なんでもない。」

近くのコンビニに行って色々買い込んできただけなのだけれども、腹の足しにと軽食込みの袋の中を覗き込んでいる友達1とは違って、君はなんでもないと言う割に何か言いたそうにしているのだけれど。
まあギグと奇抜に聞いたところで言いそうにないし、緊迫した的中率状態がやっと終わったシエスタなのだから、頭の働きは再構築の余力用に残して置くことにしよう。

そのまま君と共に再構築を終わらせてオーバーホールのスキャンも済ませて、お腹が満たされて口笛でも吹きそうな友達1ともまた明日と別れた後も、傷を癒やすようにゆっくりと家路に着く途中、大抵話し掛けてくる君があれからずっと黙ったままだ。
重い空気のコーピングには慣れているけれども、そういうのを君が纏うのは嫌だと感じる。

「やっと終わったね。」
「・・・・・。」
「妹ちゃんはもう帰っているかな?」
「・・・・・。」
「さっきちょっと食べたけれど、夕飯何にする?」
「・・・・・。」
「オムライスにしようか?それとも別のがいい?」
「・・・・・。」
「ねぇ、言いたいことがあるなら言って欲しいんだけど。」

いつもとは逆に私が君に話し掛けても全くもって好転しない。
最終楽章まで君が私を必要としてくれたけれども、やはり終われば不要なのだろうか。
ならばこのままあの時みたく別れた方が良いだろうか。

「キミは・・・」
「?」
「キミはまた、どこかに行くのか?」
「まあ、いらなくなったならどっかに行くしかないから。」
「・・いらなくって・・・!そんなことは誰も言ってない!」
「・・確かに、君には言われてないね。」

班長や班員には褒め言葉と共に労われて、部長には厳重注意込みのお礼を言われたけれども、テロリストとの攻防を終わらせた警察としては、ハッカーであるホークもクラッカーであるブラックキャットも二度と不要だと言われた。
暫くは身の安全の為に周囲を警戒してくれるらしいけれども、安全が確認されたらそれ以降は積極的には関わらないようにするとのことだ。別に君と友達1や私と縁を切るわけじゃないからと苦笑いされて、離れることが淋しいと思ってくれているようで、それに嬉しさを感じたのは自分でも結構意外な変化だった。

「俺だって心配したんだからな。あっちこっち探して。学校も施設も警察も真剣に探してくれなくて。だけど探し尽くしてそれでも探しきれなくて。置き手紙の意味だって考え抜けずに堂々巡りでさ。結局キミは自分から居なくなったのだから、元気でいると言い聞かせるしかなかったんだ。」

君は思った以上に優しくて脆くて強かった。
出会う前に戻れなくても紙くずとして捨てられなくても、今の今まで言わなかったぐらいに。

「でも突然現れてから今回また一緒に過ごして、当たり前に隣に傍に居て、相方っていうより相棒みたいで。ホークに必要なのはブラックキャットかもしれないけれども、俺に必要なのはキミなんだ。一緒に居ると落ち着くというか安心するというか、そんな存在はキミしか居ない。俺はキミが好きだ。友達じゃなくて恋人になりたい。キミと付き合いたい。もう居なくならないで、ずっと一緒に居て欲しい。」

映して欲しかった君の瞳に私が居る。
映したかった私の瞳には君が居るだろう。
どこにも相応しく無いと思っていたけれど、警察でさえ私でいいと思ってくれていた。
それは君達や警察がそのままの私を受け入れてくれたからだけじゃない。
変わった私も変われた私も変わらない私も、君達や警察は変わらずに傍に居てくれたから。
この渦巻く感情に無理矢理名前を付けなくても良い気がした。

「分かった。じゃあ、今から居候じゃなくて同棲か。」
「へ?いや、え?ちょっと待って!」

一人納得して歩き出すと君は慌てたように追いかけてくる。
さてどこから話そうか・・・と命題を色々思案しながら、二人分の足音が枕詞になって我が家へと近付いていく。

703.唇を奪うグレビレアの模範解答にフィカス・ロブスターは聴き惚れる

「貴方が死んだら私も死んでいい?」

楽々楽勝にドン引きされるような意中が溢れ返る臨界点。
本項‐ペイロード‐が破産して死滅するラスイチは貴方。

「嫌です。命を張る仕事だけれど、死なないって確約は出来ないけれど、品位に欠けるぐらい本当は嫌だけれど。誰かとでもいいから公然と幸せになって欲しい。俺は君に生きていて欲しい。」

熱伝導率が高く情熱的だけれど、真っ向勝負のような金メダル級に澄み切った瞳。
特出する耳慣れない言い回しなど無くて、どちらかというと耳慣れたベタな言葉。

芽胞の代用は段違いに疎ましくても、豊漁で煮詰まって食べきれなくても。
加熱調理して粗熱を取って小分けにして、盛り付けすれば持続可能だから。

「・・・そっか。」

そっか、そうか、そうだね。
セーフティネットのブーケ。

「私、貴方に嘘を付いていた。」

私のせいだって特別扱いで責められて、私のせいではないって差別的に慰められる。
誰も何も言わないけれど社会情勢さえ私の存在そのものだってことは分かっていた。

お待ちかねの消費期限で殺すのならば、あの人ではなく私を賞味期限で殺せと。
大雑把な濁流の鉄砲水なんかで、日照権の所有者を間違えるなと言いたかった。

タフに生きていくことに逆らえなくて、死ぬことを許されるのを待っているだけ。
あの人の分まで生きなければならなくて、あの人の夢を背負わなければならない。

重厚感のある破断‐ワンコーラス‐の地響きがのさばって首(こうべ)を回(めぐ)らせれば、急遽出仕を退席させられて本業ごと辞任させられたあの人。
回帰線‐ケータリング‐されたあの人の夢が痛恨の極みである私の現実となって、いつまででもあの人が私の中に居てスタメンからリタイア出来なかった。

ご意見ご質問を受け付けたところで、この先どうなるかなんて誰にも分からないのに。
誰もが不安を煮込んだり恐怖が上陸したりして、無限ループで踏ん切りがつかなくて。

「あの人の夢ありきであの人の為に生きてきたけれども、古巣の講義にも注力出来るようになって、私が私の為にも生きられるようになったって。」

高価な再犯でしらーっと収益化を狙う輩に、説法で病膏肓に入ってしまうから。
迎え撃たれて死ぬのが怖いのではなくて、迎え討たれて死なれるのが怖いだけ。

「でも私まだ引きずっていたんだ。私が生きていて良いって誰かに言って欲しかった。暗がりから牛を引き出すみたいに今まで気付かなかった。ほんと、自分でも笑えるくらいに。」

しらこい不況の告示は人口密度の高い番宣で話を通し、猥褻な注意書きでかまちょを代読して顔を繋ぐ。
行商が破廉恥な情報操作を連射して潮流をはしたなく深追いさせれば、不忠に顰蹙を買ったって祝賀会。

讃歌のラッシーに通気の良い人選を骨組みへとちょい足ししても、照明弾は腰を据えてはくれない。
ブーケガルニのスムージーをシェイクして飲み干しても、エデンのビュッフェには程遠いグリッチ。

血が沸き肉踊る硫化水素な駆け込み寺‐コンドミニアム‐は、スクリーニングに連れ回される可動式のキット。
それでもプリーズと称え合って情が移った潮流玩具ならば、ベールに包まれたバトルロイヤルでも長居できる。

「けれど私は貴方みたいには言えない。あの人の時は諦めることが出来たのに、私は貴方が私以外と付き合ったり結婚したり幸せになったりするのは嫌だ。嫌だと気が付いちゃった。」

だぶついたシンデレラ・コンプレックスのキルトに、ルージュのスパンコールを等間隔に手縫いして。
メタバースであってもパージのステッチで、ジェノサイドの刺繍を施してオブリビオンは遠ざけたい。

「私、結構嫉妬深かったみたい。」

704.藤の服用

とある部署の本部に所属して支部に異動した彼が、本部と合同で仕事をする為に支部の仲間を帯同して来た。

本部と彼を含む支部と協力体制を敷く検察官と、この不景気に大味だったとしても滑り出しは順調に見えた。

補助要員として本部に加わった女が彼にロックオンしたらしく、猫なで声でベタベタとくっつき纏わりつく。

口程にもないいかれぽんちならばムラムラするだろうけれど、彼女持ちと口々に言っても抑止力にならない。

ギャン泣きするどころか彼女持ちでも構わないと、バイイング・インセンティブを主体に侵攻して売り込む。

テストマッチの中盤の業績の読み筋すら鉄板でコールド負けなのに、手狭へ力業のレパートリーで入り浸る。

しみったれたと虚仮にした言い方に目は口ほどに物を言うし、見るからに惨敗している泥漿なのにいい度胸。

それでも手ぶらの創業に初期費用を現金化出来たから、仕事が軌道に乗ったこともあり飲み会を開く流れに。

ひょんなことから検察官の後輩であり彼の恋人でもある彼女と、彼女に付いている検察事務官もお誘いする。

胸に納める苦労話もウケる賄い料理になる喫食の空間で、彼の隣である放映権を陣取ってのしてやったり感。

順繰りにと壁パンの居合が定期的になりつつある時に、残業をしていた検察事務官が合流したのだけれども。

おかしなことに検察事務官より先に検察庁を出たはずの彼女が、未だ到着していないことを不思議に思って。

彼女に連絡を取ろうとしたら検事長から検察事務官へ着信があって、彼女に有事の際が発生したことを知る。

朝虹は雨な女は夕虹は晴れな彼女とは比ではなく、うまい話には裏があるの愛称の愛着をノーヘルで剥がす。

彼と検察事務官から引き継いだ検察官が急ぎ病院へ駆け付けると、事情聴取を終えた警察官から話を聞けた。

何でも担当している事件の犯行時刻が丁度検察庁を出る時刻で、犯行現場を実際に見ておこうとしたらしい。

犯行現場を確認していたら背後から誰かに突き飛ばされ階段から転げ落ち、そのまま意識を失ってしまった。

たまたま階段下を通りがかったカップルが救急車を呼んで、検察官徽章から検察庁へ確認の連絡がなされた。

梅の毒を投票しても暗がりで目撃者もおらず、対外純資産の有事の金であるギャンビットとはならなかった。

あそこは大通りから外れたまさに犯行現場で、そうでなくても暗いし危ないし人通り少ないしで危険な場所。

偶然に見付けてもらえて救急車も要請してくれたから良かったようなものの、下手したら死んでいたんだと。

真夜中の病院の病室にも関わらず叫ぶ彼を検察官が止めて、検事長には報告しておくからと帰るのを見送る。

彼にも帰ることを促すけれども居ると言い張って、けれども彼女もこれ以上迷惑を掛ける訳にはと言い張る。

ムラにならない頑なな態度にどうしたものかと彼女を見れば、顔の表情は髪の毛に隠れて見えないけれども。

掛布団を握り締める手が若干震えていることに今更ながらに気付いて、彼は彼女の境遇と性格を思い出した。

自分の言葉と態度を反省するとともに、恒久的な屋台骨の保養所‐ハンモック‐にならなければならないと。

誓った彼は三種の神器ばりに安心感を齎そうと、椅子に座って彼女の手を握ってここに居るから大丈夫だと。

目覚めた彼女がお陰で安心して眠れたとふわり微笑めば、それは良かったと言う彼の耳は赤に染まっていた。

705.我慢の限界値を超える。いやあけっぴろげな決裂フルボッコを何故我慢する必要性があるのだろうか。

政令指定都市のとある区のとある町。
卫砳ハイツというマンションがある。

エレベーターの無い4階建ての12戸、外階段が雨ざらしにされて今にも取れそうな螺旋階段の付いた、築40年以上の見るからにボロ。
住人はお年寄りか落ち着いた家族連れで、学校の校区内からは最も遠いけれど、最寄り駅から徒歩10分という地盤も程々に良い好立地。

都心からは離れているけれども自転車距離にスーパーがいくつかあって、一軒家と低いマンションが程々に点在する閑静な住宅地。
しかしエフォートやエンデバーを続けてきたこのマンションの静かで穏やかな時間は、ある一時(いっとき)を境にして豹変した。

一度も見たことはないけれど清々しくシャレオツなポケットチーフが良く似合う、鷹揚な御夫君である長年の大家が代替わりしたのだ。
そんなことは往々にしてよくあることだけど、寵臣を内製化しても奉勅命令の忠臣とは限らず、やっぱり二代目は暗愚でよろしくない。

同時に苔のようなクッション性と抜け感を醸し出すように委託していた管理会社が変わり、エグジットのような法案で扗乜ホーム株式会社となったこともいただけない。
2019年10月1日から消費税が引き上げられたのは皆が知っているインフォメーションなのだけれど、その二ヶ月前に管理会社からきたお知らせを一部抜粋しよう。

消費税率改定に伴うご契約賃料変更について、既にご承知のことと存じますが消費税率が改定されることとなりました。この度のご契約者様各位のご契約賃料に付きましては、貸主様のご厚意により据え置きにすることとなりました。実際は家賃の値下げとの形となりますことをご理解ください。

いやいやご理解して欲しいのは管理会社だ。
消費税が何パーセントになろうと関係ない。

居住用賃貸物件の貸付は非課税取引と扱われることを知らない、無知な管理会社は信用に値しない。
予算のヒートアイランド現象へノールックに値下げどころか、厚顔無恥も甚だしく据え置きが当然。

寧ろ据え置き以外はあり得ないのに、ご厚意とか火を吹くほどに恩着せがましく血迷った暴言と同義。
気骨が折れるほど気が利いていて先進的な地域密着型の親善であると、手の掛かるほど難儀に勘違い。

手垢の付いたリーシュコードは情報弱者を断崖絶壁へと狙う人間味溢れるインヒューマンのフランベ。
話題沸騰に驚くなかれと策を考える奴も濡れ落ち葉に策を採る奴も、巨匠の教科書通りで碌でもない。

これが一つ目。


玄関側の1階に道路側に面してちゃっちいサイクルポートの付いた自転車置場っぽいものがある。
けれども住人が増えたからといって、これもちゃっちい百円均一にあるようなシールが配られた。

しかしながら、一世帯3台までということに加えて部屋番号を住人に書かせるという始末。
貼っていない自転車は処分すると、任命権者はこちらであるというお知らせもきたけれど。

数年経った今でも帰投‐バース‐した定位置に、丸裸で放置されたまま。
前夜祭から後夜祭まで特攻を使い回しして、事を済ませようとしている。

因みに自転車置場も貸主様の厚意で無料で貸しているらしい。
有料にしてちゃんと整備してくれた方が良いに決まっている。

面倒だからやらないだけなのに、他とは一味違うんだというご厚意とはなんて上から目線。
とっちめることはファストにべた踏みだけれども、代謝‐モデルチェンジ‐には減速する。

旨味の試食だけを残虐に繰り返し、洗い出さないし落とし込まないAPのお色直しばっかり。
二代目と管理会社が合併して、南京玉すだれを原案としたフレッシュでもある伝統芸なのか。

これが二つ目。


自転車置場の隣に2台分の駐車場がある。
今までは住人もしくは大家が停めていた。

しかしその砂かぶり席を手堅く誰かに貸し出したらしい。
作業衣姿の人達が何度も何度も大型の車を出し入れする。

車のドアをバンバン開け閉めして、大きな声で会話をしながら。
螺旋階段をドンドンと、足音を大きく鳴らし踏み締め響かせる。

キャンセル界隈のロスをごっつい頭数ですが入ったブースへと。
インコースもアウトコースも泡を食うようなアクセントの劇伴。

これが三つ目。


マンションの階段や共用部分のお掃除をこれまた委託したらしい。
中年の女性であったけれども挨拶をしてもしけた顔で無視された。

耳が聞こえないわけではなく、声が小さいわけでもない。
ドライさえ見劣りするほどのワンパターンな無視っぷり。

挨拶をしない返さない人の気が知れない。
住人同士のカンバセーションでも話題だ。

これが四つ目。


外壁を塗り直したのはいいけれども、色を何故か白から焦茶風味にして暗くされてしまった。
そしてベランダの壁も同じく同色で塗り直したけれども、塗り方がインスタントで悪過ぎる。

ベランダの引き戸がはみ出たペンキで固まって開かなくなったり、エアコンの室外機が壊されたり、ペチャクチャお喋りが絶えなかったり。
待ち遠しく復権にフルベットしても、華美にデコった家屋へデコレーションしたハリボテを、お待ち遠様と気軽‐クイック‐に作っただけ。

とある企業の入っているビルが外壁を塗り直しした時は、ベランダやテラスにも立ち入るからといって、粗品と防犯用の簡易に取り付けられる鍵を持って挨拶に来た。
直営店でもフランチャイズ店でもお客様のものという重責のマインドが真芯にあるからこそ、タイムアップまで生産性の低い仕事をしないという安全祈願は雲泥の差。

これが五つ目。


マンションの隣に保育園が勝手に建設されて勝手にグラウンドオープンしていた。
親身一体な説明会も建設して良いかどうかを請われることも全く持って無かった。

子供の奇声や保育士の大声、下手な楽器の雑音、保護者の車の路駐、行き帰りには耳を劈く甲高い声に、運動会も紙ペラ一枚で済ませる。
時間が到来すれば気分屋の並木に引火して、渇水に暖を取るような気の重い区間‐イニング‐はワンクール以上に揃い踏みのアンコール。

袋とじの物販は新ネタの余興にもならない上に、帯番組としてバラ色の回顧になるからと胸熱に団結力を増していく。
遊具なんかも砂地や砂場と共にあって、自転車置場に隣接しているのにも関わらず金網しかないから全てが砂まみれ。

子供なんだからと言えば、誰でも情に脆く許してくれるとでも思っているのだろうか。
子供は絶対王者の宝の山ではないし、印加‐マッチング‐の審査員はお前らではない。

脈拍は死線のパルスになって、ストレスは満タンの群生で、内蔵され続けて万病の元になる。
好き好んで隣から騒音が発生するところに住みたくもないのが、理解出来ない頭なのだろう。

これが六つ目。


マンションの道路側の斜め向かいにある十字路に、二棟の高層マンションが建設されることになった。
それ自体は全然良いのだけれど、その建設を請け負う建設会社が入居したのが間違いの始まりである。

単純計算のワンクリックでもシーズンなら肥沃になるから、美味な食感に小躍りしたくなるのだろう。
空き部屋を活用するのはいいけれども、住人が住んでいるマンションであることを全く考えもしない。

ドアをガンガン開け閉めして、階段をドタドタ昇り降りして、もう一つ違う建設会社が入居した時も同じだった。
心服するようなカスタマーサービスを望んでいる訳ではないのに、感嘆するのは並走する出身地を弁えない姿だ。

これが七つ目。


コ/ロ/ナ/禍の2020年2月、探索の結果で原因とされている爆買いが話題になった某国とおさらばして出向するかの如く、パイセンとは比べ物にならないとある一家が401号室に越してきた。
引っ越しの挨拶は無く初日からドタバタしていたけれども、片付けもあるだろうからと一週間ほどは我慢していたけれども、時の人のプログラミングは敗者復活戦からの返り咲きを狙っていたらしい。

ボールを蹴ったり未知の植物を育てたりミニカーを走らせたり。
もちろん奇声や飛んだり跳ねたりは四六時中のワールドクラス。

耳栓や爆音のイヤホンが手放せないけれども、お金を掛けるのが勿体なさ過ぎて無意味。
寧ろ四六時中の騒音のせいで、耳が小さな音にも敏感に反応するようになってしまった。

15年住んでいて初めての騒音。
匿名で管理会社に苦情を入れた。

待てど暮らせど返答が来ないからいい加減にしろよと痺れを切らせて問い合わせしたら、名指しで書かれていて全戸に調査をして、そんな事実は無いとして解決済とのことだった。
しかしそんな強行軍がハゲ散らかすほどの嘘であることは分かりきっている理由は、住人の家族の中に母親同士が古くからの知り合いであり円卓な関係を築いている二家族がある。

しかしそのどちらともそんなポピュラーなかさぶたのような調査はされていないし、良く世間話をするお隣さんも、帰りの時間帯に良く会う人達もまるで知らない。
宙ぶらりんの暴露本の参加賞に病みつきで、対向車である選書に対しせいせいするほどに嘘を付き追っかけのフェスをリードしていると勘違いしている気味の悪さ。

これが八つ目。


コ/ロ/ナ/禍が明けた2025年2月、騒音がしなくなってホッと一息つく暇もなく、タイムリープしたのかと思うくらいの最大級に、現在進行形の騒音一家がやって来た401号室。
当たり前に挨拶は無しで、こちらももちろん爆買いが話題になった某国からやって来たようで、しかも合同会社汛乃動鄭を名乗っているけれども、調べても銘板すら出てこない弱小会社。

一度だけ見掛けたことがあるけれども、違法民泊のような装いで、ゾロゾロと連れ立ってペチャクチャ喋って騒いでいた。
さて高架の豪雪が好機‐ベストシーズン‐と言わんばかりの、貞操観念が皆無のこの騒音一家の一日の流れを見てみよう。

6時〜7時:起床したらしく物が落ちるようなむしろ落としているドンッとかドンドンとか、行ったり来たりする足音がドタドタしながら奇声が走り回る。

7時〜9時:外出するのか家具と共に玄関を激しく開け閉めすること、計10回以上ギーガーキーキーガンゴン、リフトアップとリフトダウンを繰り返す。

9時〜12時:恐らく直前から仕事を始めているのか、引き戸やベランダのドアをガラガラゴンドン、犬の鳴き声ではなく無駄吠えも聞こえるようになる。

12時〜17時:電動ドリルのようなガーっという音が加わったり、トンカチを打ち付けるようなトントントントンという音が聞こえたりするようになる。

17時〜22時:台所を雑に使っているのか、ドントントンという規則正しくも耳を貫く騒音が加わったり、ドンガンガチャガチャと響いたりもしてくる。

22時〜翌1時:ギーっという音がしてから排水管に水が流れる音がして、天井を這うようなバリバリという音も加わって風呂のストーカーになれそうだ。

翌1時〜翌3時:いつまで経っても音が響いていて、恐らく就寝しただろうなと一瞬思って秒読みしていると、ドンっと音がして、ああまだいやまただと。

エアバッグが作動するほどの衝撃と、天井から床が揺れるほどの地響きと、部屋全体へそこかしこにぶつけられる魔球の浮遊感と。
外からも中からも天井からも床からも聞こえる、日本語ではない大人の男女の大声と子供の奇声を付け加えて、6時〜翌3時まで。

こうしてみると3時間しか騒音がしない時間がないように見えるけれども、大体寝ている時間だから認識していないだけで、過密に騒音はしている可能性がある。
風呂とトイレの時は排水管からの音で時間が丸わかりで、外出時はドアの開け閉めと階段でのギャーギャーな大声で位置が丸わかりで、申し遅れましたともない。

ある時は置き配すらも間違えて届いていたけれども、触らずに邪魔でも放置するしかない。
何故なら行間を読んで優しくしたとしても、意味を持たせて疑われたら厄介であるからだ。

エネルギーチャージされた騒音のポスターを客前にペタペタ貼り付けて、エレクトリカルなプロジェクターに映し出す。
ポラロイドで連写した欠点に青息吐息でも、そういう非常識な一家だからというホームサインは住民の総意なのである。

これが九つ目。


建設工事があれば解体工事もあるけれども、工事の機械だけではない騒音もあるけれども、期間が決まっているからこそまだ我慢が出来るし、勇壮なキャンパスに描く想いの詰まったデザインはお互い様な部分もあるから諦めもつく。
しかしながらこのマンションの筆舌に尽くしがたい騒音問題は、今のところでもこれだけあるけれども日に日に増えていくのは目に見えていて、無期限の一方通行な上にストレスのおみやは、刻一刻と目に焼き付いていや増していく。

もしかしたらわざと荒らすことによって本調子とは違う何かを隠しているのだろうか。
自分磨き‐オンリーワン‐に恋慕して、めくれずに見付からなければ無いのと同じだ。

二代目は吝嗇に屹立して運気を下げる奴なのだろう。
落ち着いた大人な町のホワイエの民度はだだ下がり。

商魂たくましく目が血走りながらとりっぱぐれないようにあくなき金‐ゼニ‐を頬張る為に、RTAを濫用してダウナーばかりが集結。
迎光する自分達以外に人は居ないと思っているのか、それとも諫言する立場だと思い込んでいる自分達が優先されるべきなのが当然か。

ボーダーレスな時代であるからこそ、常識人と非常識人の擁壁‐ゾーニング‐は、グラデーションなどではなくバッサリ分断されなければならない。
動かぬ証拠の撮影会はスコープ越しに続けているけれども、ここまで人の質が悪くなってしまったのならば、厄除けに参拝した方が良いのだろうか。

706.香り立つ万能薬

組織故の弊害である相見積もりにふて寝を決め込まれても、集合ポストへの毒見がネックにならないようにしながら、無限の捜査から前足と後足の工程を積み重ねて、おつむが不明瞭な使い手とタイマンを張れるように、所作の動静で選曲し復顔にて絞り込む。

功労者から迅速に手に入れた手掛かりが次なる手掛かりの道標になるから、格好の場所に呼びつけなくても時たま熱い視線を送れば、総本山からの御来光を拝むべくモノクルに引き入れる。

ポケットに入れた片手をギュッと握り締めて感情の退避、血が滴っても涙が溢れても震えた声が口から飛び出さないように、呼吸を止めるかのように平常時との差異を静かに埋めるように、病み上がりはポケットマネーかつ独学の運指を起用する。

行かないで
逝かないで
冷たくならないで
温かいままでいて
私の前から居なくならないで
私の隣にずっと傍に居て
私を一人にしないで
誰かが死ぬのはもう嫌だ
触れる体温を失わないで
死なないで
生きていて

仕事の為に借り物の言葉で奇策な他殺の自死を選んだ父親から託されたから。
成長が見たかったと言って病死した母親から元気でいてねと願われたから。
私を好きだと言ってくれたあの人は私を守る為に不適切でも戦ってくれたから。
復讐を遂行したい親友から知らないフリをして偽って欲しいと言われたから。

誰もが実績のある実行犯であり約束も果たしてくれたから、私は日和らずに生きなければいけなくて、心が無いから模範的な生き方をしなければならなくて。
けれど心が壊れていた方が良かったと思えるのは、こんな気持ちを理解出来ない方が良かったと思うから。
一箇所でも狂うと失敗してしまうけれど、強さを見せ付けるように戦って勝たなくたってよくて、サービスエースを一回スパイクすれば勝ちだから。
思った通りになれば切なさに変わってしまう願掛けが、用意周到な計画の計算違いを生んで狂って逝っても、新旧織り交ぜてちゃんと失敗したものを成功させなければ。
異質に新設した計画には随分と自信があっても、個体差のある安物の自分には自信が無いから。

いつまで生きていればいい?
死んだら楽になれるって本当?
建屋の劣勢を言っていたら何かが変わっていた?
円熟味が増しても三人一緒に居られた?
全部私が問診さえも上手く出来なかったら
デンジャラスな中核に気付かれてしまったから

カンニングペーパーがあったって言えるわけがない。
完璧じゃなくていいから全部要らないから、ずっともっと一緒に居たいなんて。
占いみたいに未来が知りたいんじゃなくて、追想が染み入る過去の答え合わせがしたいだけ。

「我慢していることを言って?それは我が儘じゃない、迷惑でも甘えでもないから。言うのを押し殺して我慢している時点で、君の心は壊れずにそこにあるんだ。頼むから何でもいいからどんなことでも最後まで全部聞くから、お願いだから言ってくれ。」

腹落ちをぶっちゃけずに黙秘ならば、命の使い込みも嘘付きにはならないのに。

「一緒に死んでくれませんか?」

貴方と一緒に死にたいというか、貴方と一緒なら怒られない気がするから。

「方法は何でもいいし任せます。」

確実にイチコロで死ねるなら。
動機ならきっと誰かが考えてくれる。

言いたいことも思っていることも言えないこともたくさんあるけれど、口から出た言葉はこれだった。
私が生きなければならないとか、貴方に生きて欲しいとかじゃない。
皆が私に生きることを望むけれど生きて欲しいと願うけれど、私は生きることを望まないし生きたいと願わないだけ。

死ぬことを誰かに認めて欲しかった
死ぬことに誰かの許可が欲しかった
誰かに良いよって言って欲しかった

「分かった。方法は考えておくよ。」

だから大丈夫だという顔をしてくれたから、そう良かったと安心して意識を手放すことが出来た。

こういう時は拒絶したらパニックになって手がつけられなくなって、最悪自分から死ぬか周りを考えずに巻き込んでしまうから、そういう状況を作ること自体駄目であり、一旦受け入れて安心させて落ち着かせることが大事。

強くて硬いけれどしなりはしなくてポッキリ折れてしまうほどに脆く、表では光を浴びて裏で闇を背負う苦心惨憺の肌触り。

「変なことを言いました。忘れてください。」

「いや、方法は考えておくから。ちゃんと覚えておくよ。」

大荒れに迷いながら教えたことに、想定内とハッキリと答えを出してくれる。
私が喜ぶことをしているだけ言っているだけで貴方の感情はそこには無いと思っていたけれども、どうやらポスティングの設計ミスとかそういうことではないらしい。

「嘘は付かないよ。どんなことでも言ってくれたから良かったと思っている。君のどんなことでも受け止めたいから、必ず受け止めるから。」

確実に接触事故‐バットエンドコース‐だけれども、シフトチェンジする他のコースなら何がお望み?
いやそれ以外のコースなんてそもそも最初から選択肢に無かった。

「そんなことをしたら彼らが悲しむとか、ノスタルジックな綺麗事を言うつもりはないよ。君が苦しんでいるのに、それを良しとする彼らではないだろうから。もちろん誉められたことじゃないのは分かっているし、何が正解かなんて分からないけれど、俺がそうしたいから、君と居たいから。」

俺の傍なら安心だから。
身の安全は保証出来ないけれどなんて、お茶目な冗談は香りが立つ。
バトンリレーを突進しながら跳躍する、裏被りな頑張り屋さんをお慕い申し上げています。

「実行するかはともかくとして、俺も君となら死ねる気がするよ。今までの誰も出来なかった君の願いを叶えたい。俺が叶えることが出来るのなら、むしろこの上なく嬉しいことだよ。」

貴方が私を幸せにする未来ではなく、私一人だけが幸せになる未来でもなく、貴方と私の二人が幸せになる未来。
未来と区分されて集計されるものは、なにも転調を繰り返す現世のことだけではないから。

実際に死にたいとかじゃないけれど、肩の荷が下りてホッとした。
私は死んでもいいんだって。
生きなくてもいいんだって。
私以外が肯定してくれたから。